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組織に属する個人にとって、皆が一体となってどう目標達成するか、組織を悪いところをどう変えていくか、こういった取り組みへのチャレンジが難しいのは、ご存じなことでしょう。とくにリーダーという立場の方はご苦労されていることだと思います。
例えば、目標達成においては、自分ばかり孤軍奮闘で頑張っていて、周りの人や部下はいい加減な仕事している。部下にやる気がなくて、目標達成が危うい。尻を叩けば恨まれる。こんなことで頭を痛めているのでは?
組織やチームの悪い風習を変えようと、あれが問題これが問題と議論し、何が問題か判明しても、誰も解決しようと行動しない。変えようとすると、ああだこうだとごねて現状維持モードになる。率先して変えようと動けば、やっかいもの扱いされる。しばらく時間が経過して再度トラブル発生、また問題だ問題だと騒ぐ。こんなことにうんざりしているのでは?
若かった私自身が苦い想いをし、当時の部下につらい想いをさせてしまった組織の目標達成への取り組み方。一体に何を間違えてしまったのか。
その疑問には、「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみが、答えてくれました。
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目次
「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ①
コーポレートコーチングとは認知科学に基づく理論
問題だらけの組織をひとつにまとめ、高パフォーマンス集団にする。「ほんまかいな、そんなうまい方法があるかい!」と思うところですが、本書のコーチングではそれが可能とのこと。
コーチングと言っても個人に対するコーチングではなく、組織へのコーチングです。正式名称は「コグニティブ・コーポレート・コーチング」と言い、コグニティブというのは「認知」という意味です。「コグニティブ・コーポレート・コーチング」というのは、認知科学の知見に基づいているコーチング理論なのです。
それらと「コネクティブ・コーポレート・コーチング」が大きく異なるのは、コネクティブ・コーポレート・コーチングが現代科学の基本パラダイムである認知科学の最新知見に基づいてる点です。「組織を変える」という目的は同じでも、人間の脳の機能に着目してプログラムがつくられているため、再現性があり、実行すれば誰にでも効果が現れるのです。
「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ(P21)
専門書のようにすごく難しそうで読むのも気が引けてきますが、ところが本書は物語形式になっていて、非常にわかりやすく「コグニティブ・コーポレート・コーチング」について掴むことができます。各章末にはまとめの解説がありますし、巻末には、「コグニティブ・コーポレート・コーチング」のポイントが整理されており、しかも用語集つきです。本書の監修者である苫米地氏のコーチング本は、難しい言葉だらけでチンプンカンプンになりますが、著者田島大輔氏や久野和禎氏のおかげでしょうか、良い意味で期待を裏切ってくれております。
組織の定義は会社だけではない・・・ということは?
その「コグニティブ・コーポレート・コーチング」ですが、組織のコーチングと言われると、会社という組織にだけ通用するコーチング理論なのかなと思ってしまいますが、どうやらそれが違うのです。本書で定義している組織とは会社だけではないのです。
最後になりますが、コグニティブ・コーポレート・コーチングで考えている、コーポレートの範囲について少しだけお話をさせて下さい。
世の中には多くの職業があります。個人で仕事をしている方から、企業や役所など何らかの組織に所属している方まで多種多様です。
もしかしたらコーポレートという言葉の印象から、組織に所属していない方は、自分にはコグニティブ・コーポレート・コーチングは関係ないかな?と思われるかもしれません。
ですが、私たちは少し異なった見方をしています。仕事では、必ずしも組織の一員ではないとしても、どなたにもお客様や取引先がいますし、さらに普段の生活まで目を向けると、実は私たちは誰もが何らかの組織の一員だということに気がつきます。家族や友人、さらには地域社会との関わりがあり、遊びや趣味だって完全に一人でやることは少ないはずです。その意味で私たち全員が何らかのコーポレート(組織)の構成員なのです。「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ(P217~218)
本書の定義している組織の範囲は、会社だけとは限らないのです。夫婦、家族、町内会、PTA、スポーツチームなど、1人でやるわけでなく2人以上なら組織なのです。この考え方は、コグニティブ・コーポレート・コーチングの魅力の一つだと私は考えます。なぜなら、せっかくコグニティブ・コーポレート・コーチング理論を学んだにもかかわらず、会社で試すことができなかったら、学びが無駄になりますが、プライベートで属する組織でも活用できるなら、学びが無駄にならないからです。
コーポレートコーチングのゴール設定に関するポイント
私は、昔、コールセンターのリーダー的な立場にいて、組織のゴールを達成するために、オペレーターにきつめのパフォーマンスを押し付けて嫌われた過去があります。いえ、嫌われたというよい憎まれたというが正しいでしょう。なにしろ、某巨大掲示板に実名で誹謗中傷を書かれくらいですから。
私自身もオペレーター経験があり、オペレーターの大変さを理解していながら無理難題なパフォーマンスをおしつけていたことに、内心苦しんでおりました。結局、その会社は辞め、自分自身がリーダー的な立場から逃げるようになりました。それくらいオペレーターにも自分にもダメージを与えた私のやり方、組織のゴール設定は何が悪かったのか。
本書を読了し、ここが悪かったのだなと反省したのが、組織のゴール設定に関する3つの考え方を間違えていたことでした。
①組織の目標は抽象度を上げて設定しよう
抽象度の高い目標とは何でしょうか?
例えば、営業部と開発部があったとして、それぞれの部署で目標設定されていると思いますが、営業部の目標と考えるより会社の目標と考えた方がよいということでしょう。
物語に登場した「抽象度」は、認知科学の誕生に伴って注目された分析哲学の概念で、個人や組織が新たな創造性や可能性を手に入れるために非常に重要なものです。
そもそも、組織が現状を打破して、今の世の中にはない新しい商品やサービス、システムを創出するには、「クリエイティブな発想」が求められます。クリエイティブな発想はデザインやアートの世界に限った話ではなく、どんな仕事にも必要なものです。抽象度が低く、組織の課題を具体的な事象として捉えているうちは、クリエイティビティは生まれません。課題の抽象度を上げて考える視点が必要です。「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ(P136)
「課題の抽象度を上げて考える視点が必要です。」とありますが、どういう意味であるか難しいとこですが、こういうことだと思います。例えば、犬好きな人と猫好きな人がいるとします。犬と猫、飼うならどっちがいいかと議論させると、意見が合いませんでした。では、この争い(課題)解決のため抽象度を上げてみます。
まず、犬と猫の抽象度を上げると動物という共通点があります。すると、犬好きな人も猫好きな人も、両者とも動物好きと言えます。動物好きとして議論させると、動物を飼う事の良さについて意見が合い、争いは解決しました。
犬や猫の話でピンとこない場合は、会社でのケースも創造してみましよう。例えば、ある商品を販売するとして、営業部は価格を安く設定してほしい、開発部はできないと争っていたとします。お互いの事業部としての目標があるため、このままでは堂々巡りです。そこで抽象度を上げて、営業部も開発部も会社として考えてみることにしました。すると会社として利益が出ていればいいからということで、譲歩できるところが見つかり、争いは解決しました。
このように抽象度を上げると、お互いの共通点が見つかり、問題が解決につながることがあります。今回は問題解決を例に出しましたが、アイデア創出も同じだと思います。だからこそ「課題の抽象度を上げて考える視点が必要です。」と著者は言われているのでしょう。多くの人が抽象度を上げる思考を行っていますが、問題があるたびに抽象度を上げる思考を行っているかというと、そうではないと思いますので、習慣化したいところですね。
②組織の目標は、現状の外側に設定する
コーポレートであろうと個人であろうと、コーチング理論共通のスタートラインと言えば、ゴール設定です。ほとんどのサラリーマンが、上司・同僚・後輩との会話の中でゴールの話をしたことがあると思います。ゴールがないと仕事になりません。それくらいゴール設定は大事です。
本書もゴールについては、現状の外側にゴール設定することの大切さと語られていますが、現状の外側って何でしょう?
では自分の描いたゴールが現状の外側のものになっているかどうかは、どのように判定すればよいのでしょうか。ひとつ参考となるチェックポイントが「ゴール実現の道筋が見えない」ことです。実現する道筋は、ゴールを設定しスコトーマが外れることで後から見えてくるものです。ですのでゴールを設定した時点で道筋が見えるのであれば、それは現状の延長上でしかありません。
「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ(P78)
例えば、料理学校に通っている人なら、「料理人になる」をゴール設定するのではなく、「世界一の料理人になる」をゴール設定するということです。後者の方が現実離れですよね。でもゴールはそれくらい大きく持とうということなのです。大きなゴールを達成するために夢中で向かっていくからこそ、途中の小さなゴールは通過点として達成されていくでしょう。
つまり、料理人なるという現状の延長としてのゴール設定だと、料理人になれないかもしれません。しかし、世界一の料理人になるという現状の外側のゴール設定なら、例え世界一の料理人なれなくても、料理人にはなれるかもしれません。そういう理屈なのです。
「そりゃ、そうだな」と思います。現状の外側のゴールを達成しようするときの努力の方が、現状の延長としてのゴールを達成するときの努力よりも厳しくつらいものだからです。料理人になることがゴールの人と、世界一の領料理人になることがゴールの人の努力が同じということはないと思います。
「実現する道筋は、ゴールを設定しスコトーマが外れることで後から見えてくるものです。」とありますので、まずは今のゴールをより大きなゴールとして設定してみるのがよいと思われます。
しかし、ここで気になることがあります。抽象度の高いゴールと現状の外側のゴールというのはどう違うかということです。例えば、「料理人になる」というゴールよりも、「世界一の料理人になる」というゴールの方が現状の外側のゴールであることは理解できます。でも同時に、抽象度の高いゴールであるとも言えそうです。なんだか混乱しますが、抽象度の高いゴールが「クリエイティビティ」であり、現状の外側のゴールが「実現の道筋がみえない」ことであるならば、「料理人になる」というゴールを次のようなゴール設定になるのかなと思います。
「世界中の味覚が違うどんな人が食べても、おいしいと言ってもらえる料理を創る料理人になる」
具体的な料理名が決まっているなら、なおよしでしょうが、このような目標であるならば、抽象度の高く現状の外側のゴールと言えるのでないでしょうか。少なくとも私はそのように理解しました。
③組織の目標はWant-toのゴールを設定する
組織の目標は基本的にやらされです。好き好んで設定したわけではありません。達成しなければならないのです。このように「~しなければならない」というゴールを「Have-to」のゴールと言います。
一方で、「~したい」というゴールを「Want-to」のゴールと言います。
もうひとつ、ゴール設定で注意したいのは、「自分が心から望むことをゴール」ということです。「~したい」と心から望むゴールのことを「Want-to」のゴールと呼びます。Want-toのゴールは、脳を活性化させ、ハイパフォーマンスを生み出す力があります。
「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ(P79)
「売上目標は、先月より10%アップだ。必ず達成しろ」なんて命令されても、「へいへい」と言ったことでしょう。やる気おきませんし、達成できないかもしれません。しかし、自分自身が「売上目標は、先月より10%アップしてやるぞ」と思っていたら、達成できるかもしれませんし、そもそも仕事が楽しいですよね。だからこそ、「Want-to」のゴールを設定する必要があるのです。
個人の目標と組織の目標を合致させよう
しかし、組織のゴールを「Want-to」のゴールにすることなんてできるのでしょうか。組織に属する各個人が、組織のゴールを自らのやりたいことと思えるのでしょうか。
私たちは、自分のゴールが組織の目指すゴールと合致したとき、大変なクリエイティビティを発揮します。
「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ(P155)
会社の仕事でゴール達成に向けて頑張っていれば、自分のゴール達成にもつながるとしたら、どうでしょう?
たとえば、プロのデザイナーになることをゴールにしている事務職の方が、会社からデザインの仕事をやるよう配属転換されたとしましょう。その方は、新しい配属先ではやる気が起きる気がします。会社のゴールと自分のゴールが合致しているからです。
しかし、組織のゴールと個人のゴールを合致させることが理想だとしても、すべての社員のゴールと会社のゴールを合致させるのは至難の業です。どうすればよいのでしょうか?
そこで、抽象度の高さが重要になります。組織のゴールと個人のゴールが合致しやすいように、抽象度の高いゴール設定することが、組織のゴール設定の理想的な姿なのです。どういうことでしょう?
例えば、プロのデザイナーになることをゴールにしている事務職の方のゴールが、「自分のデザインを通して人を喜ばせること」だとします。そして組織のゴールが「あらゆる人を喜ばせる商品を創造、施策をすること」だとしたらどうでしょう。
「人を喜ばせる」という点が合致しているため、事務職としてデザイン力を活かしながら人を喜ばせることは何かと考えて、何ができるか考えることができるでしょう。そして、そのノウハウを自分が独立したときに活かすことができるとしたら、働きがいが生まれるかもしれません。
数字を達成するだけのゴールではなく、個人と組織のゴールが合致するようなゴールを持つこと。これが大事なことなのです。
「組織が結果を出す」非常識でシンプルなしくみ①:まとめ
組織の目標達成のためとはいえ誤った指示で後悔しないためにも
コールセンターでの私の過ちは、組織の目標を「さあ、やれ」と言わんばかりにオペレーターに押しつけたことでした。オペレーターの方々は、自分の叶えたい目標があり、オペレーターが本業ではなく、ただ生活費を稼ぐため働いている方が多かったため、目標を押しつけられ、きつめのパフォーマンスを上げなくてはならなかったのは苦痛だったでしょう。自分がやられたら嫌なことを押し付けていたわけですから、なんとお詫びすればよいかわかりません。
一方で、オペレーターもさぼりますから厳しいやり方は正解だし、実際に結果も出ていたため、お客様や上司から高い評価を得たこともありました。
しかし、その代償が某掲示板での誹謗中傷です。目の前のオペレーターのだれが私の悪口を書いているのかわからず、でも確実に犯人はいる状態、所属していて最悪の空気感でした。一体私は何を得ていたのでしょうか。
もし、その時コーポレートコーチングを知っていたのであれば、きっと別のやり方をしていたでしょう。抽象度が高く、現状の外側であり、Want-toになるようなゴールになるよう知恵を絞ったはずです。そうすれば、10年以上も後悔し続けるような想いをしなくて済んだと思います。
もし、今現在、若き日の私のような悩みをお持ちの方は、ぜひ私と同じ過ちを犯さないことを願うばかりであります。
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