BRAND NEW FRAME.NOTE

部下の育成に失敗しない発達段階に応じたコミュニケーションとは何だ?

記事内に広告が含まれています

スキルアップが難しいのが、コミュニケーション能力。理由は簡単で、コミュニケーションには相手がいて、自分の思い通りにならないからです。

私も仕事を教える立場になったとき、育成には苦労しました。教えたことをすんなりと理解してくれればよいのですが、それは少数派。何度同じことを説明しても理解してくれない人、わからないことを勉強しない人の方が多いからです。

そんなとき、私は自分の心の中で、あの人はできない人、この人はできる人だとレッテルを貼ることもありました。そして、このレッテル貼りは、自分にも相手にも成長につながらないため、やってはならないことであり育成者の課題だと思いました。

そこで、自分のコミュニケーションの取り方の課題解決をしたく、さまざまな書籍を読み、言葉使いや姿勢など、学んだ内容の実践に取り組む中で、この視点は抜けていたなと大きな気づきを与えてくれた理論がありました。

その理論こそ、成人発達理論です。

なぜ部下とうまくいかないのか①

上司は部下をどのようにみているか

人を評価するとき、どのような基準で評価するでしょうか。おそらくは自分の五感で感じたことが評価につながっているのではないでしょうか。

話してみたり、振る舞いを見たりして、「いい人だった」、「嫌な人だった」という評価。間違えてばかりの人を見て、「できない人」、言われたとおりにしかできない人を見て、「無能な人」、態度が悪人は、「礼儀知らず」などなど、ご自身の五感で感じ相手の内面を評価されていると思います。いわゆるレッテル貼りです。

そして、その評価は態度に表れてしまいます。しまっておくことができず、嫌な人にたいして嫌味な態度で接することもあるでしょう。私は表に出てしまいがちですが、グッとこらえて大人な対応を取る努力はします。人格者なら、表に出ないでしょうし、コミュニケーション能力を高める努力をされているかと思います。

どちらにしても、それは自分の対応を変えていることにしかすぎません。コミュニケーションは相手がいますので、相手が変わってくれなければ、本当の意味で良い関係は築けないのです。

良い関係を築くためにも、相手の内面を理解したうえで、自分自身がよい変化を与えるような影響力を持つ必要があります。しかしがなら、自分の五感で知りえた評価だけで、相手を理解できよい影響を与えることができるかというとそこに課題があります。

そこで、自分の五感だけでなく、学問的な角度からも相手を理解したいと思いました。そこで成人発達理論の登場となるわけなのです。

成人発達理論とは

本書はロバート・キーガン(ハーバード大学教育大学院教授,発達心理学者)の成人発達理論の解説本であり、著者は加藤洋平氏です。加藤氏のブログ「発達理論の学び舎」はこちらです。

成人発達理論に関する情報共有。ロバート・キーガン、オットー・ラスキー、カート・フィッシャー、ケン・ウィルバーなどの発達理論を紹介。
発達理論の学び舎 - 発達理論の学び舎

何の発達や成長が学べるのかといいますと、人の意識・器に関してです。心理学の本となると難しいものが多いのですが、この本は物語形式のため、要点がわかりやすく伝わると思います。

成人になってからでも、知識やスキルに関する成長を遂げることができる、という認識をきちんと持っておられる方もいると思います。しかし、私が学んだ成人発達理論では、知識やスキルを発動させる根幹部分の知性や意識そのものが、一生かけて成長・発達を遂げるという考え方を持っています。そうした考え方のもと、人の成長・発達のプロセスやそのメカニズムを解明する学問領域のことを「成人発達理論」と呼んでいます。

なぜ部下とうまくいかないのか(P25)

人の意識の成長は、一生続くものなのです。相手のことを「こんな奴だ」とレッテルを貼る行為は、相手が成長しない、変わらないと言っているのと同じことではないでしょうか。少なくとも私はそのように捉え、反省しております。

しかし反省だけではいけません。そもそも「意識の成長」とは何か。この点を理解しておく必要があります。

人間の意識の成長・発達は、「主体から客体へ移行する連続的なプロセスである」ということを述べているにすぎません。

なぜ部下とうまくいかないのか(P25)

キーガンの主体・客体理論で大事な点は、意識の成長・発達が進めば進むほど、認識の世界が広がっていき、これまで捉えることができなかったものが見えてくるようになる、ということです。
言い換えると、意識の成長・発達とは、客体化できる能力がどんどん高まることを指しており、結果として、認識できる世界が広がっていくということなのです。

なぜ部下とうまくいかないのか(P26)

人の意識は、一生かけて発達していき、発達すればするほど、客体化していくということ。つまり、ものすごく簡単に小学生にわかりやすく言い換えるならば、初めは自分の感情まかせな意見を言っていても(主体的)、意識が発達していけば、相手のことや社会のことを考えるた意見を言いうことができる(客体化)ということになるかと思われます。

成人発達理論:5つの意識の発達段階

成人発達理論には5つの意識の発達段階があります。本書の巻末の要約から一部を引用します。

発達段階1 具体的思考段階
この段階は、言葉を獲得したての子供に見られるものです。そのため、すべての成人は、基本的にこの段階を超えていると言えます。
発達段階2 道具主義的段階(利己的段階)
この段階は、自分の関心事項や欲求を満たすことに焦点が当てられており、他者の感情や思考を理解することが難しいです。自らの関心事項や欲求を満たすために、他者を道具のようにみなすと言う意味から「道具主義的段階」と形容されます。
発達段階3 他者依存的段階(慣習的段階)
この段階は、自らの意思決定基準を持っておらず、「会社の決まりではこうなっているから」「上司がこう言ったから」という言葉を多用する傾向があります。つまり、他者(組織や社会を含む)の基準によって、自分の行動が規定されているのです。この段階は、組織や社会の決まりごとを従順に守るという意味から、「慣習的段階」とも呼ばれています。
発達段階4 自己主導段階
この段階は、自己成長に関心があったり、自分の意見を明確に主張したりするという特徴を持ちます。
発達段階5 自己変容・相互発達段階
この段階では、自分の価値観や意見にとらわれることなく、多様な価値観・意見などを組み取りながら的確に意思決定ができるという特徴があります。

なぜ部下とうまくいかないのか(P251~)参考資料より

発達段階1は子供の段階であり、発達段階2以降の4つの段階が成人の段階になります。

部下指導・育成のポイント

前述のように、成人発達理論によれば、人の意識の発達段階は大きく分けて5段階あります。ということは、相手の意識の発達段階を見極めれば、発達段階ごとの適切な接し方や支援が可能になります。

支援者が強引に相手を変えるわけではなく、相手の意識の発達段階に合わせた対応をすること。そうすることで、相手自身の力で変わっていくような支援ができるわけです。この点が、成人発達理論を活かした部下育成のポイントです。いえ、部下育成というより、もっと広く、さまざまな人とのコミュニケーションにおいて、相手によい影響を与える接し方が可能になると思います。

逆に、相手の意識の発達段階を見極めずに、強引に相手を変えるような指導をしてはいけません。組織では、上司という立場は権力者ですから、強引に相手を変えることができてしまうのです。強引に変えた結果、最悪の場合、相手を傷つけてしまう危険性があることをじゅうぶん理解する必要があります。

部下の意識の発達段階に合わせた指導方法をする

では、相手の意識の発達段階に合わせた指導とはどういうことでしょうか。イメージしずらいと思いますので、一例をあげますと、次のような考え(意識)の部下がいると想像してみてください。

一人目:わかっていないのに仕事を勝手に進めるし、聞く耳持たない
二人目:言われたことしかできない
三人目:仕事は十分できているが自分の意見を押し通しすぎて人の意見を聞かない

どの部下も意識の発達段階が違うのですが、それぞれに対しどう指導しますでしょうか。

一人目には、勝手に仕事をやらせ失敗したら叱りますか。二人目には「自分で考えなさい」と指導しますか。三人目には、人の意見を聞くよう説得するため、面談しますか。

このような各発達段階のコミュニケーションの課題に対して、対応方法のヒントが本書で説明されています。「なるほど、発達段階2の部下はこういう特徴があるから、こういう質問を投げかけて、気づきを与えればいいのか」と、納得できるものでした。(対応方法については次回の記事に、書かせていただきます)

なぜ部下とうまくいかないのか①:まとめ

部下の自己成長を支援できる人になろう

自分の中で、相手に対しレッテルを貼り、そのレッテルのイメージで接したりすると、自分も相手も成長しませんし、強い立場が弱い立場の考えを強引に変えてしまうことになります。それは、相手が心の病気になるかもしれず、とても危険なことです。

リーダーか否かは関係なく、人の意識は一生かけて成長し、成長するたびに客体化していく。この事実が尊いことを心に刻まなければなりません。なぜなら、今できなくても、今後社会のためになる人として成長する可能性があるからです。であるならば、リーダーの単純なレッテル貼りで人を潰していいわけがありません。

だからこそ、発達段階に応じた接し方をして相手に気づきを与え、相手自身の力で成長するよう関わっていくことが大事なのです。自分も相手も成長し、意識がより客体化していく(他人や社会を考える)ことは、自分だけでなく誰であってもありがたい話ではありませんか。同じ社会を形成する人々が、相手のことを考える人ばかりだなんて、よい社会でしょう。

成人発達理論は、そのことを私に教えてくださりました。本格的に学ぶことは難しいと思われますが、理論の基本を知ることで自分の意識改革ができ、それが誰かの成長につながるなら、勉強してみる価値はあると思います。

逆に、成人発達理論を学ばず、人を傷つけない影響力をもつなんて、大変ですしょうからね。

 

モバイルバージョンを終了