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「夫婦関係はいつからギクシャクし、相手の存在が苦痛になってきたのか。結婚前、勇気を振り絞って結婚への不安を吹き飛ばし覚悟を決めて結婚し、一緒になってからも、お互い相手のために頑張ってきたはずなのに、何故罵ることしかできなくなっているのか。仕事でイライラしているのに、帰宅しても夫婦関係でイライラなんて、なんとかならないものか。」
世の中、そう思っているご夫婦の数はかなりの数になるのではないでしょうか。
夫婦関係といえば、職場以外で、最も自分に影響を与える人間関係と言っても過言ではありません。だからこそ、自分の人生を幸せにするためにも、夫婦関係がうまくいかない状態は避けたいところです。
そんな夫婦関係ですが、やはり一度壊れたら修復不可能なのでしょうか。
いや、どうやらあきらめなくてもいいようです。
本書、「私をギュと抱きしめて」は、そんな夫婦関係を改善するためのヒントを学ぶことができます。
目次
書籍:私をギュっと抱きしめて
夫婦関係を修復したいと思ったら?
本書は、ひとことで言えば夫婦カウンセリングの本ですが、しかしながら、難しい心理学の用語は少ないという印象を受けました。
ベースになっている理論は感情焦点化療法というものですが、理論の解説本というより、事例ベースの本です。そのため、心理学に詳しくなくても読めると思います。また、各章に「やってみよう」というワークがあり、理解を深めるのに役立ちます。
ボリュームですが、約240ページあり、1ページ800文字くらいです。大人の読書速度の平均が、600~800/分とすると、全部読み終わるのにぶっつづけ240分ですから、4時間ぐらいで読める本だと思います。通勤電車で読むとしても、ゆっくり読んでも1~2週間であれば読み終わる量です。
とくに、夫婦関係が悪化し、イライラした毎日を過ごしている方は、是非読んでみてほしいと思います。夫婦関係が円満になるために、自分がどうあるべきかに気づかされると思いますし、この本で紹介されているコミュニケーションの取り方は、夫婦関係に限らず、さまざまな人間関係とのコミュニケーションに役立つと思います。
夫婦関係が悪化する悪魔の対話とは?
悪魔の対話には3つのパターンがあった!
まずは、ネガティブな夫婦の会話について、どんなパターンがあるか理解しておく必要があります。
夫婦が結びつきを感じなくなってから長く時間が経てば経つほど、二人の会話はネガティブなものになる。研究者たちはそういう有害なパターンにいろいろ名前をつけている。私はそれを「悪魔の対話」とし、三つの種類に分けて、それぞれを「悪者探し」「抗議のポルカ」「冷めて離れる」と呼んでいる。
私をギュっと抱きしめて(P36)
3つの悪魔に対話について、私なりに要約してみました。
①悪魔の対話1:悪者探し
簡単に言うと、お互いを責め合う会話です。自己防衛のため相手を責めているのです。攻撃は最大の防御ですから、罵り合いになりますよね。口喧嘩ばかりしている状態といえば日本っぽいでしょうか。
②悪魔の対話2:抗議のポルカ
一方が責めて、一方が相手にしていない会話です。「女性が責めて、男性が無視する」のは、よくあるパターンでしょう。ポルカってのは、チェコの民俗舞踊のようですが、一方が手を伸ばし、一方が後ずさりする状態をダンスに例えているようです。
③悪魔の対話3:冷めて離れる
抗議のポルカが発展し、責めていた方も黙ってしまうパターンです。つまりお互い無視している状態ですね。どちらかと言えば、3つの中で一番楽かもしれませんが、状態として最悪です。
悪化している夫婦関係の改善には、この「悪者探し」「抗議のポルカ」「冷めて離れる」という3つの状態があることを理解することから始まります。
夫婦関係を改善に導く会話
感情焦点化療法の7つの会話
この本の理論は、「感情焦点化療法」と言われており、夫婦関係を改善へ導くための7つの会話が紹介されております。
第一の会話:「悪魔の対話」に気づく
第二の会話:むき出しの箇所を見つける
第三の会話:不安定な瞬間に立ち戻る
第四の会話:私をギュっと抱きしめて
第五の会話:傷つけられたことを許す
第六の会話:身体接触による絆
第七の会話:愛を持続させる
タイトルだけで、なんとなくイメージがつきますね。各会話の詳細は本書でご確認いただけますと助かります。
このような7つの会話に沿ってカウンセリングを行い、悪い夫婦関係を改善していくわけです。夫婦関係だけでなく、さまざまな人間関係に応用できないかと本書を読んでいて気づいたのですが、やはり第一の会話が重要だと思います。
第一の会話で夫婦関係の破綻を未然に防ごう
第一の会話は「悪魔の対話」が始まったときに、「またこのパターンだね。どうしてこういう話になったんだっけ?」と「悪魔の対話」に気づいて冷静になろうという会話です。相手を責めるのではなく「悪魔の対話」を責める、「問題を外在化した会話」という感じです。
こういう会話の手法は、夫婦関係だけでなく、様々な人間関係にも役立つ方法だと思います。また、言い争いになりそうになったとき「どうしてこういう展開になったのか。自分はどんな悪いことをしたのか」と、自分を客観視してヒートアップしないようにコントロールするのは大事なことです。
効果の高い心理療法の会話手法を、実生活で活かすことができれば、きっと自分と周りとの人間関係が良好に変わっていくはずです。
今後、夫婦喧嘩なりかけたときや他人とのトラブルになりかけたら、第一の会話を意識することをお勧めします。
「どうしてこういう展開になったんだっけ? 自分はどんな言葉で傷つけてしまったのだろうか?」
夫婦関係の改善は言葉の奥の感情を理解することからはじまる
この本の中で紹介された事例で、私がもっとも気づかされたエピソードを要約します。
ジェーンとエドの若い夫婦は、2年前にジェーンが凶悪な強盗に襲われるまでは幸せだった。だが、強盗に襲われたことが、トラウマになっているようでジェーンは日ごろから自殺をほのめかすようになる。
エドはもうジェーンがその事件を乗り越えていいのでは(2年経過しているので)と思っている。なぜなら、エドの携帯電話がONになっていないだけで、ジェーンが怒り狂うため、エドはやっていられなくなったからだ。
カウンセラーはジェーンの「事件について会話」の中に、電話というキーワードがあるのを思い出した。そして電話が意味することについてジェーンに質問する。
ジェーンは語る。「強盗に襲われ意識を失いかけていたとき、そばの電話を掴んで助けを呼ぼうとした。薄れゆく意識の中で、エドに電話をすれば助けに来てくれると信じた。でも電話はできなかった」
あのとき、電話は唯一の望みで命綱だったのだ。だからジェーンは、いまだに電話がつながらないとパニックになってしまうのだった。エドは突然で理解できたという表情で彼女の髪をなでた。
「共感するとはどういうことか」その疑問の答えとなるエピソードです。
カウンセラーが「電話」というキーワードに気づき、電話が意味することについて質問しました。そのおかげで、エドは知ります。自分にとって迷惑だった「電話」が、ジェーンにとっては「命綱」だったということを。
「電話」のもつ意味が、カウンセラーの質問をきっかけに鮮明になった瞬間です。
もし、ジェーンの心の奥の「電話の意味」にエドが気づくことができなかったら、この夫婦の改善は失敗したかもしれません。でも「電話の意味」に気づいたことによって、ジェーンの心の奥の感情を知り理解できたことで、夫婦関係が良い方向に向かいました。
このエピソードでは、カウンセラーの力を借りて気づきました。しかし、普段から共感のアンテナを貼っていれば、自らの力で気づくことができるかもしれません。
「人がよく口にする言葉に関心を持ち、質問して掘り下げ、言葉への意味付けを知ることで、相手のことをより理解する。」
夫婦関係だけでなく、自分が関わっている人達に対して、共感する努力をしているかどうかと問えば、正直なところできていないと言わざるを得ません。できていないにも関わらず相手のことを悪く考えるのはいかがなものでしょう。
本書は、そんな自分の未熟さを戒めるよいきっかけ与えてくれました。
私をギュっと抱きしめて:まとめ
悪化した夫婦関係の改善、離婚か継続か?
もし夫婦関係がギクシャクしていて、その状態を解決するとしたら、「関係を終了させるために離婚する」か、「関係を継続させ改善の努力をする」かどちらかを選択することになるでしょう。
関係を終了させるのは、お金も問題や法律の問題があるかもしれませんが、双方にとっては簡単な解決策かもしれません、なぜなら自分を変える努力をしなくていいからです。そのかわり自分も人として成長しません。そのため離婚後、他の良い人と一緒になっても、また同じように夫婦関係が冷めた状態になるかもしれません。
一方で、関係を継続するための努力をするのはどうでしょう。相手が変わってくれる保証もないままに、自分だけが関係改善の努力をするわけです。かなり大変なことかもしれません。
しかし、その努力を学びだと捉え、常に自分の言動や行動は自分の責任と考え、自分の言動や行動を改善しつづけることができるなら、落ち続けた水滴が岩の形変えることがあるように、相手の心も変わる可能性があります。そして、自分自身も人として成長しているはずです。
私と妻は破滅的な関係ではございませんが、若きしの頃のような初々しさがあるわけではありません。いつ悪魔の対話状態になるかわかりません。
だからこそ、こういう本を読んで、今から自分のコミュニケーションスキルを高めていきたいと思います。