最近、「もう、どうしろと言うのか!」と憤怒したことありませんか?相手は子ども?上司?友人?親?どなたでしょう。
もし思い当たる節がないとおっしゃるなら、きっとめぐまれた人間関係の輪の中にいるか、相当なコミュニケーションの達人なのででしょうね。そういうスキルのお持ちで羨ましいです。
逆に思い当たる節があるなら、その憤りを解消する方法を知りたいのではないでしょうか。
そうであるならば、この本は少しお役に立つかもしれません。
目次
人の心を操る技術
人を操る前にまずは人に操られないこと
さて、まずは本書の章立てを確認してみましょう。以下のような章立てですが、どんな感想を持たれますでしょうか。
【第1章】 無意識に働きかける技術
【第2章】 心を読む技術
【第3章】 行動やしぐさで操る技術
【第4章】 言葉で操る技術
【第5章】 操られない技術
ご覧のとおり操る系の内容が多いのですが、催眠術の本というわけではございません。コミュニケーションに関する心理学の本です。コミュニケーションに関する心理学の本を読み慣れている方には、それほど新しい内容はないかもれません。
ただ、「何故いつも自分が損な役回りさせられているのだろう。何故、断れないのか。なんとかあいつにやられない方法はないか。」という心の状態で、この本の章立てを立ち読みしたら、どうでしょう。
つい、購入したくなってしまう気がしませんか。実は、それが私の購入理由です。ちょっとマインドが弱っていた時に、内容に惹かれて購入してしまいました。
で、パっとみてどの章が気になりましたでしょうか。今、自分が置かれた立場によって興味がわく章は人それぞれかもしれませんが、4章あたりでしょうか。
しかし、ここでは第5章に注目したいと思います。なぜなら、人を操ることよりも、操られないようにすること先だと思うからです。
そもそも操るスキルを身につけるのはかなり難しいです。まずは操られないスキルを身に着けたいと思います。
否定的ダブルバインドとは
「否定的ダブルバインド」この言葉をご存知でしょうか。説明代わりに本書の例を引用します。
「わからないことは自分で判断せず、必ず相談しなさい」とあなたの上司がいったとしましょう。あなたには自分で判断できない案件があったので、言われた通りの上司のところへ相談に行きました。しかし、「こんな簡単なこともわからないのか!」と怒られてしまいました。そこであなたは、それ以降、迷うことがあっても相談せず、自分で判断することにしました。すると今度は、「なぜ相談せずに勝手に決めてしまうんだ!」と怒られました。
相談しても怒られ、相談しなくても怒られ、かといってこの関係から逃げ出すこともできません。
このようにどちらを選んでも正解ではなく、逃げる場所もない状態を否定的ダブルバインドと呼びます。人の心を操る技術(P146)
いかがでしょう。こういうご経験があるのではないでしょうか。
これが私が上司とうまくいかない理由です。私は否定的ダブルバインドに対し反射的に抵抗する体質なのです。
この矛盾が続くと、洗脳・依存・病気の原因になることもあります。自分が悪いと自分を責めてしまうからです。
自分が悪いと思ってしまうと相手の言い分を受け入れてしまう場合があります。
上の例で言えば、この後「なんでお前はできないのだ!できないんだったら俺に言うとおりにやれ!」
「やっぱり俺はできない人間なんだ、言うとおりにしよう」と思い込んでしまうかもしれませんね。
こうやって、洗脳状態になっていくのが危険なのです。
否定的ダブルバインドから逃れろ
では、そんな洗脳からどうすればいいのか。P222以降に答えがあります。
否定的ダブルバインドから身を守るためには、『要約しますと、相手の中に矛盾を探すこと。相手の矛盾に気づいたらそれを認めること。矛盾を認めたら、矛盾した相手とどうやって付き合っていくか改めて考えること』です
シンプルに考えるなら、自分のせいにしないということですね。
しかし、相手の矛盾が分かっていても、ずっと矛盾を突きつけられる状態が続いたら、やはり自分が悪いと思ってしまう状態に戻ってしまうかもしれません。
その場合は、相手から逃げることを考えましょう。
自分のことは自分で決定しよう
否定的ダブルバインドに陥ると、自分の立場が弱くなってしまいます。何故でしょうか?
それは、自分に決定権がないからです。相手が選択肢を与えてくれているとはいえ、どれを選んでも不正解状態だからです。つまり自分には何も選択肢がありません。
であるならば、自分に決定権があれば、自分の立場が強くなっていきます。では、その決定権はどうやって決まるのでしょう。
P230にはこのようなことが書いてあります。
人が無意識的に使っている「上下関係を決めるルール」をまとめると、次のようになります。
【立場が上、勝っている、命令できる】
求めていない/求めている/困っていない/選択肢を持っている/決定権を持っている/状況をコントロールできる/捨てられる/失うものがない/迷惑をかけている/責任を負わない/興味がない/愛していない【立場が下、負けている、従わなければならない】
求めている求められている困っている選択肢を持っていない決定権をもっていない状況をコントロールできない捨てられない失うものがある迷惑をかけられている責任を負う興味がある愛している人間関係に悩むとき、これらのルールに従って自分の立場を確認してみてください。
これは、理屈で理解するのは難しいですね。そこで、先ほどの上司の例で考えてみたいと思います。
わからないことがあるために、部下は上司に答えを聞かなくてはいけないません。この時、答えを教えるかどうかは上司が選択できます。上司は困っていませんし、仕事に関する決定権もあります。
この状況、部下にとっては、圧倒的に不利です。
では、有利にするにはどうやればいいのでしょうか?
例えば、他にも上司と仲良くなるという方法も考えられます。あるいは、上司ではなく他の先輩に聞くこともできるでしょう。それを今後毎日続けていけばいいのですが・・・どうでしょう。いずれもうまくいくかどうかは相手次第のところがありますね。上司と仲良くなれるかわかりませんし、先輩がやさしいとも限れません。これでは、本当に楽になるのでしょうか・・・?
やはり、コントロールできる自分の行動をなんとかするべきでしょう。
仕事がわからない状態を解消するために努力すると。パワハラだと訴える。退職する。
①は辛いですが、②は相手を困らせることができるので大逆転、でも自分も面倒です。③は就職活動が大変ですが、一番かしこいかもしれません。
なんでもかんでも退職とすればいいというわけではないですが、このケースでは無難だと思います。
本書P224にもこう書いてあります。
否定的ダブルバインドの「逃げられない」は絶対ではありません。逃げると何かを失うので、結果的に逃げられないだけです。それを捨てる覚悟さえあれば、いつでも逃げ出すことができます。そして逃げれば、否定的ダブルバインドは崩れます。
人との関係を絶つのは簡単なことではありません。そうすることであなたは、家族、恋人、友達、仲間、仕事、地位、財産など、自分の大切にしてきたものを失う事になるからです。もしかしたらその人との関係がなくなるだけで、完全にひとりぼっちになってしまうかもしれません。
しかしどうか一人になることを恐れないでください。たった一人の人間が、あなたの人生を台無しにしようとしているのです。
人間関係を終わらせるのは悪いことではなく、とても前向きなことです。私はカウンセリングルームで多くの方のお話を伺ってきましたが、人間関係を諦めたことによって起こる不幸よりも、人間関係を諦めなかったことによって起こる不幸の方がずっと多いと感じてます。
あなたが逃げ出すことを、相手は責めるかもしれませんが、それは逃げ出すあなたの責任ではなく、逃げたい気持ちにさせた相手の責任です。その人に気を使う必要など、どこにもありません。
大事なところでしたので、長文でしたが引用しました。
さまざまな人間関係に当てはまることだと思いますが、逃げる=失うと考えてはいけませんね。
人の心を操る技術:まとめ
もし「もう、どうしろと言うのだ!」と怒りが沸いてきたら、自分がコントロールできる範囲はどこまでであり、どこからが相手の範囲かを考えましょう。そして相手の範囲なら相手にお任せし、自分は関わらないことです。
難しいですが、否定的ダブルバインドに苦しめられないよう、相手の矛盾には敏感になってくださいね。
それともう一つ。否定的ダブルバインドがあるなら、肯定的ダブルバインド(治療的ダブルバインド)もあります。これは、どっちを選んでも正解というやり方です。カウンセラーが使う技ですね。肯定的ダブルバインドは覚えたいテクニックです。
人を操ったり操られてたり。