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「もう、どうしろと言うのか!」と、憤怒したことありませんか? どう選択したらよいかわからないような、どうにもならない怒りです。
例えば「今日のお昼は何食べる?」「なんでもいいよ」「じゃあ、パスタにしょうか」「えぇ~、パスタは嫌だなぁ」「そうか、じゃあカレーにする?」「う~ん、カレーも嫌だ」「じゃあ、何がいいのさ!」「なんでもいいよ、決めてよ」「なら、そばにしよう」「そばは嫌だ」「では、どうしろと言うのか!(怒)」こういうやりとりです。
この憤怒の正体を知り、回避できるものなら回避したいもの。そうであるならば、この本の知識はお役に立つと思います。
目次
人の心を操る技術
人を操る前にまずは人に操られないこと
本書の章立ては、以下のようになっております。
【第1章】 無意識に働きかける技術
【第2章】 心を読む技術
【第3章】 行動やしぐさで操る技術
【第4章】 言葉で操る技術
【第5章】 操られない技術
ご覧のとおり、「操る技術」という言葉が多いため催眠術をイメージするかと思いますが、催眠術の本というよりかは、コミュニケーションに関する心理学の本です。コミュニケーションに関する心理学の本を読み慣れている方には、それほど新しい内容はないかもしれません。
ただ、「なぜ、いつも自分が損な役回りさせられているのだろう?」「なぜ、断れないのか?」「なんとかあの人にやられない方法はないか?」という悩みをお持ちの方は、一読されるとよいでしょう。とくに、第5章は押さえておきたいところです。まずは、人から操られないよう身を守る知識を得るのが大事だと思います。
否定的ダブルバインドとは
「否定的ダブルバインド」まずは、この言葉を説明している箇所を引用します。
「わからないことは自分で判断せず、必ず相談しなさい」とあなたの上司がいったとしましょう。あなたには自分で判断できない案件があったので、言われた通りの上司のところへ相談に行きました。しかし、「こんな簡単なこともわからないのか!」と怒られてしまいました。そこであなたは、それ以降、迷うことがあっても相談せず、自分で判断することにしました。すると今度は、「なぜ相談せずに勝手に決めてしまうんだ!」と怒られました。
相談しても怒られ、相談しなくても怒られ、かといってこの関係から逃げ出すこともできません。
このようにどちらを選んでも正解ではなく、逃げる場所もない状態を否定的ダブルバインドと呼びます。人の心を操る技術(P146)
いかがでしょうか、このような矛盾を経験されたことは一度くらいあるのではないでしょうか。そして、このような矛盾こそ私が人(とくに上司)とうまくやれない理由です。私は、否定的ダブルバインドに対し反射的に抵抗してしまうのです。
このような矛盾な命令が続くと、人によっては自分が悪いと自分を責めてしまったり、相手の言い分を受け入れてしまうこともあり、洗脳・依存・病気の原因になったりします。
上の例で言えば、この後「なんでお前はできないのだ!できないんだったら俺に言うとおりにやれ!」言われ、「やっぱり俺はできない人間なんだ、言うとおりにしよう」と思い込んでしまう可能性があり、そうやって、洗脳状態になっていくのが危険なのです。
否定的ダブルバインドから逃れろ
では、そんな否定的ダブルバインドから身を守るためには、どうすればいいのでしょうか?
本書P222以降に書かれていたアドバイスを要約しますと、次の3点がポイントです。
①相手の中に矛盾を探すこと
②相手の矛盾に気づいたらそれを認めること
③矛盾を認めたら、矛盾した相手とどうやって付き合っていくか改めて考えること
二人の関係を相手に決めさせるのではなく、あなた自身が決めれば洗脳は起こらないのです。
人の心を操る技術(P223)
相手とのやりとりにおいて、なにかあったらすぐに自分が悪いと思うのもよくないことですが、だからといってすぐに相手のせいにするもよくないこと。そう極端に考えるのではなく、冷静に分析するのが大事です。
洗脳する人は、人の弱さにつけこみます。ですから、自分自身が強くなるしかありません。自分のことは自分で決める、それが強くなるということだと思います。
しかし、相手の矛盾が分かっていても、職場など上下がはっきりしてく環境で、上司からずっと矛盾を突きつけられる状態が続いたら、やはり自分が悪いと思ってしまうかもしれません。
その場合は、相手から逃げることを考えましょう。職場を変える勇気を持ちましょう。
自分のことは自分で決定しよう
否定的ダブルバインドに陥ると、自分の立場が弱くなってしまうのは、自分に決定権がないからです。相手が選択肢を与えてくれているとはいえ、どれを選んでも不正解状態だからです。つまり自分には何も選択肢がありません。
であるならば、自分に決定権があれば、自分の立場が強くなっていきます。では、その決定権はどうやって決まるのでしょう。
人が無意識的に使っている「上下関係を決めるルール」をまとめると、次のようになります。
【立場が上、勝っている、命令できる】
求めていない/求めている/困っていない/選択肢を持っている/決定権を持っている/状況をコントロールできる/捨てられる/失うものがない/迷惑をかけている/責任を負わない/興味がない/愛していない【立場が下、負けている、従わなければならない】
求めている求められている困っている選択肢を持っていない決定権をもっていない状況をコントロールできない捨てられない失うものがある迷惑をかけられている責任を負う興味がある愛している人間関係に悩むとき、これらのルールに従って自分の立場を確認してみてください。
人の心を操る技術(P223)
ここは、理屈で理解するのは難しいですね。そこで、先述した本書P146の引用文の上司の例で考えてみたいと思います。
わからないことがあるために、部下は上司に答えを聞かなくてはいけません。この時、答えを教えるかどうかは上司が選択できます。上司は困っていませんし、仕事に関する決定権もあります。このような状況は、部下にとって圧倒的に不利です。
では、上司と仲良くなる努力するのはどうでしょうか。あるいは、上司ではなく他の先輩に聞くのはどうでしょう。いずれ方法もうまくいくかどうかは相手次第のところがあります。上司と仲良くなれるかわかりませんし、先輩がやさしいとも限りません。これでは、本当に有利になるのでしょうか。有利なるとは言えませんね。
では、有利にするにはどうすればいいのでしょう?
それは、コントロールできる自分の行動をなんとかするべきなのです。例えば、こんな方法があると思います。
①仕事がわからない状態を解消するために努力する(自分で調べる、勉強時間を増やすなど)
②パワハラだと訴える
③退職する
などなど。
①は辛く時間がかかりますが自分の力になります、②は相手を困らせることができるので大逆転ですが、自分も面倒です。③は就職活動が大変以外は、一番楽な方法だと思います。なんでもかんでも退職とすればいいというわけではないですが、このケースでは無難だと思います。
本書P224にもこう書いてあります。
否定的ダブルバインドの「逃げられない」は絶対ではありません。逃げると何かを失うので、結果的に逃げられないだけです。それを捨てる覚悟さえあれば、いつでも逃げ出すことができます。そして逃げれば、否定的ダブルバインドは崩れます。
人との関係を絶つのは簡単なことではありません。そうすることであなたは、家族、恋人、友達、仲間、仕事、地位、財産など、自分の大切にしてきたものを失う事になるからです。もしかしたらその人との関係がなくなるだけで、完全にひとりぼっちになってしまうかもしれません。
しかしどうか一人になることを恐れないでください。たった一人の人間が、あなたの人生を台無しにしようとしているのです。
人間関係を終わらせるのは悪いことではなく、とても前向きなことです。私はカウンセリングルームで多くの方のお話を伺ってきましたが、人間関係を諦めたことによって起こる不幸よりも、人間関係を諦めなかったことによって起こる不幸の方がずっと多いと感じてます。
あなたが逃げ出すことを、相手は責めるかもしれませんが、それは逃げ出すあなたの責任ではなく、逃げたい気持ちにさせた相手の責任です。その人に気を使う必要など、どこにもありません。
大事なところでしたので、長文でしたが引用しました。さまざまな人間関係に当てはまることだと思いますが、逃げる=失うと考えてはいけません。
人の心を操る技術:まとめ
人に操られないこと、自分を操ること
冒頭のような矛盾する状況に「では、どうしろと言うのか!(怒)」と怒りが沸いてきたら、自分がコントロールできる範囲はどこまでであり、どこからが相手の範囲かを考えましょう。そして相手の範囲なら相手にお任せし、自分は関わらないことです。冒頭のパターンなら、自分で決めろと相手に選択させればいいし、一緒にご飯を食べに行かなければいいのです。
ただし相手が上司だったら、自分で決めろなんて言えないし、食事を断るのも無理でしょうから、弁当でも持参して、一緒に食事に行かない方法を選びましょう。健康のため、節約のためとでも言えば、避けてるとは思われないでしょう。自分でコントロールできる手段を選べばいいのです。
否定的ダブルバインドを見抜くのは難しいかもしれませんが、否定的ダブルバインドに苦しめられないよう、相手の主張の矛盾には敏感になる必要があります。自分の身は自分で守らなければならないのです。人に操られないようにしましょう。
今、否定的ダブルバインドに苦しめられている方は、逃げるが勝ちという素晴らしい言葉があることを思い出していただいて、自分の行動の操っていただければ幸いです。