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私たち人間は、社会の中で生きており、社会にはさまざま人間関係があり、人間関係にはそれぞれ役割があります。その役割の中で、自分と言う人間は、他人を動かしたり、他人から動かされたりしています。当然、個人には意思がありますから、自分がお願いしたとおりに動いてくれるとは限りません。そこがコミュニケーションの難しさです。
もし、思うように動いてくれなかった人が、動いてくれるようになったらどれほど快適なことでしょう。可能であればコミュニケーションに余計なエネルギーは使いたくないもの。
人を動かすのは難易度が高いことではありますが、相手を分析し相手に合わせた言葉の使うことで、難易度が下がるかもしれません。そんな言葉のテクニックを学べる技術があるので紹介させていただきます。
「影響言語」で人を動かす です。
目次
「影響言語」で人を動かす
LABプロファイルとは?
同じ言葉で話をしても、人によって伝わったという手応えがあるときと、そうでないときがあります。その差は何かと考えたとき、「人によって響く言葉に違いがあるのではないか、適切な言葉があるのではないか」という疑問が浮かびました。となると注目しべきは言葉と心理の関係になり、そこで購入したのが本書『「影響言語」で人を動かす』です。
本書はLABプロファイルについて書かれた本であり、LABプロファイルとは、「The Language and Behavior Profile」の頭文字をとったもので、「言葉と行動のプロファイル」のことです。
本書は、ロジャー・ベイリーによって開発された「LABプロファイル(言語と行動のプロファイル)」に基づいています。LABプロファイルは、七〇年代中ごろにリチャード・バンドラーとジョン・グリンダ―らによってアメリカで開発されたNLP(神経言語プログラミング)の進化系にあたります。
「影響言語」で人を動かす(P29)
では、LABプロファイルを身につけることによって、自分にどんなメリットがあるのでしょうか。
LABプロファイルを使うと、人がどのようにしてモチベーションを高め、情報を処理し、決断を下すのかがわかるため、円滑なコミュニケーションを行うことが可能になります。
「影響言語」で人を動かす(P24)
円滑なコミュニケーションができるようになるだけでなく、モチベーションの高め方がわかるのがポイントですね。人を動かす立場の人は知っておきたいスキルでしょう。
では、円滑なコミュニケーションはどのうようにして行うことができるのでしょうか。
LABプロファイルでは、一二個の質問を使いますが、それらは日常会話の中に織り込むこともできますし、大勢を対象とした調査に使うこともできます。相手の話している内容よりも、むしろ答えるときの話し方に注目し、相手が質問に直接答えてくれなくても、答え方を見れば相手のパターンはあきらかになります。
そして、何度も繰り返し質問して返ってくる答えを聞いているうちに、実際に質問をしなくてもその人が使う一定のパターンを聞き分けて識別できるようになり、やがて状況に応じて適切な「影響言語(相手の心を動かす言葉。Influencing Language)」を即座に使用できるようになります。人は話をするとき、無意識にその人特有のパターンの言葉や身振り・手振りを使いますから、相手のパターンに合わせて話せると、コミュニケーションがとてもスムーズにとれるようになります。LABプロファイルは、自然に会話の中へ織り込むことができるので、本書では多くの会話例を紹介しています。「影響言語」で人を動かす(P24~25)
通常なら、相手に何か依頼するとき、言葉は選びつつも「自分の言葉・表現」で依頼すると思います。その「自分の言葉・表現」が相手に響く言葉であれば相手は気分よく動き、響かない言葉であれば抵抗されてしまっていたわけです。
しかし、LABプロファイルは、相手に質問して相手の答え方から相手のパターンを掴むことで、相手の心を動かす言葉を使うことができるとのこと。ポイントは「相手の言葉を使う」ということです。
その相手の心を動かし、行動に影響を与える言葉を「影響言語」と言います。
では、影響言語にはどのようなものがあるのでしょうか?
動機づけの特徴と行動上の特徴
LABプロファイルは、「動機付けの特徴」と「行動上の特徴」と、大きく分けて2つのカテゴリーがあり、「動機付けの特徴」は6つのカテゴリー、「行動上の特徴」は8つのカテゴリーがあります。
動機づけの特徴
主体性 | 率先して行動を始めるか 他の人が行動を起こすのを待つか |
主体・行動型 反映・分析型 |
価値基準 | 人の感覚や感情を刺激するのはどのような言葉か | |
方向性 | やる気が高まるのは、目標達成するためか、問題回避するためか | 目的志向型 問題志向型 |
判断基準 | やる気が高まるのは、自分の内側の基準か、外側の情報か | 内的基準型 外的基準型 |
選択理由 | つねに別の道を追求する方がよいか 決められた手順を与えられた方がよいか |
オプション型 プロセス型 |
変化・相違対応 | 人はどのように変化に反応し、どれくらいの頻度で変化を必要とするか | 同一性重視型 進展重視型 相違重視型 進展・相違重視型 |
行動上の特徴
スコープ | 全体像を必要とするか、それとも詳細情報を必要とするか | 全体型 詳細型 |
関係性 | 他人の発するノンバーバル(言葉以外)な反応に敏感か、それとも自分の内側の世界にこもったままか | 外向型 内向型 |
ストレス反応 | ストレスに対してどのように反応するか | チョイス型 冷静型 |
連携 | 一人で働いているとき、周りに人がいるとき、みんなで一緒に働いているとき、どの環境が一番能率的に働けるか | 個人型 近接型 チーム型 |
システム | 仕事について考えたとき、感情に関心が向くか、それともアイデアやシステム、ツールやタスクに関心が向くか | 人間重視型 物質・タスク重視型 |
ルール | 自分や他人に適用する行動上のルールは何か? | 自分型 無関心型 迎合型 寛容型 |
知覚チャンネル | 物事を納得するとき、どの知覚チャンネルから情報を集めるか | 視覚型 聴覚型 誤解型 体感覚型 |
納得モード | 納得して決断するために、集められた情報をどのように処理しますか | 回数重視型 直感重視型 疑心型 期間重視型 |
「動機付けの特徴」と「行動上の特徴」でこれだけの分析となりますと、コーチングやカウンセリングなど心理学を専門にしている職業の人でない限り難しいのではないかと思います。あるいは、スクールなどで理論やロールプレイなどできちんと学ぶ必要もあるでしょう。
しかし、どれかひとつであれば、今すぐにでも試すことができると思います。私が「これは本当に使えるなあ」と思っているのが次に述べるカテゴリーです。
LABプロファイル:方向性
目的志向型と問題回避型
数多くあるLABプロファイルのカテゴリーの中から「動機付けの特徴」中の方向性、目的志向型と問題回避型に注目しました。
なぜ、目的志向型と問題回避型に注目したかと言いますと、本書には次のように書いてあったからです。
『目的志向型』に響く言葉の例は、「達成する」「獲得する」「~できる」など、ゴールに向かったり、何かを手に入れたりするイメージの言葉です。
一方、『問題回避型』の場合、「解決する」「避ける」「~しなくて済む」という何かを避ける言葉を選択するすると効果があります。
この文章を読んでピンときました。職場にいる人達は、『目的志向型』と『問題回避型』に分けやすいということに。
たしかに、LABプロファイルには多くの質問技法が紹介されており、それらを駆使してパターン分析するわけですが、素人がにわか知識で簡単に見分けることができるようなものではございません。
しかし、『目的志向型』か『問題回避型』かについては、素人でも見分けやすいのではないでしょうか。仕事で何かをはじめようとするとき、「それはこういう問題がある」とリスクばかり気にする人(問題回避型)と、「目標を決めてこうしようああしよう」と進めたがる人(目的志向型)にわかれるかと思いますので、お心当たりのある方は多いと思います。
どちらかというと『目的志向型』の私は、『問題回避型』相手には言葉を変えるようにしました。
次のケースはその例です。
実践!影響言語 問題回避型
私はシステムの運用保守をしてますが、なにかしら業務改善は必要なこと。しかし、改善提案しても反対する人もいてなかなか進まないことがあります。
例えば、こんな感じでうまくいかない相手がいました。
私「ここはこう改善すると、稼働も軽減されるしメリットがあるからやりましょう」
相手「いや、こういうリスクがあるから駄目です」
こういう展開になると議論も続けたくないですし、この相手とは話すのも嫌になってきて、「(心の声)なら、やりづらいままやってればいい、こっちは助けないからな」こういう感情になってしまいます。
しかし、LABプロファイルを知って考えが変わりました。このケースでは、リスクを気にする人に対し、メリットを伝えてますので、あまり響かないのです。むしろ、やらないことに対してのリスクを伝えた方がいいのです。
そこで、相手には次のような言葉に変えて伝えるようにしました。
私「ここを改善しないと、こういう問題が起こるかもしれません。そしたらどうします? 改善すれば回避できると思いますよ。」
相手「う~ん、たしかに。では変えましょう」
このとき、「えっ、こんなあっさり納得するの」と、驚いてしまいました。LABプロファイルは凄い、まさか本当にうまくいくとは。
このとき、影響言語というのは、かなり使えると実感しました。
「影響言語」で人を動かす:まとめ
相手の言葉を使って相手を動かそう
LABプロファイルを実践するためには、かなりパターンがあるため、簡単ではございません。しかし、私が行ったように、動機付けの特徴のパターン『目的志向型』か『問題回避型』を使用するだけでも、コミュニケーションは楽になります。
以前、紹介したミルトンモデルも同じように人を動かすテクニックです。私の認識になりますが、ミルトンモデルは自分の命令を相手に伝えるにあたり、命令と悟られないように伝える技術、LABプロファイルは相手の言葉を使う技術と言えます。
ミルトンモデルにしろ、LABプロファイルにしろ、コミュニケーションは技術であり能力を上げることができるんだとつくづく思います。自分の性格なんだとあきらめて他人と衝突する時間を過ごすのではなく、少しでも技術を磨いて能力を上げたいものです。
世界はどこに行っても、人だらけ。コミュニケーション能力をあげ気楽に生きていくためにも、技術があるなら学び続けたいものです。