記事内に広告が含まれています
世の中には誤ったことをしても、謝まらない人がおります。電車で人を突き飛ばした親父、仕事でミスした上司、汚職だらけの政治家など、思いつく人がいるのではないでしょうか。
私が上司と揉めたとき、問題は上司の方にあると思っております。そうでなければ、好き好んで上司と揉めるわけがありあません。しかし、上司からしたら私の方が問題だと思っているはずです。お互い自分が正しく相手が悪いと思っていますので、謝るわけがありません。
そしてこのようなケースにおいて、和解しないまま時間が経過すると、立場が弱い私の方がなにかとやりづらくなり、「争うべきではなかった」と後悔することになります。
どうしたら、謝らせることができるのか?
そんな怒りで頭がいっぱいのとき読んでおきたいのが、「D・カーネギーの「人を動かす」」なのです。
目次
D・カーネギーの「人を動かす」
人を動かす秘訣
悪いことをした相手に謝罪をさせる、つまり「謝る」という行為をさせたいのです。つまり人を動したいわけですが、どうすれば動いてくれるのでしょうか。
D・カーネギーは「人を動かす」秘訣について、次のように言っております。
人を動かす秘訣は、この世に、ただ一つしかない。この事実に気づいている人は、はなはだ少ないように思われる。しかし、人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、自ら動きたくなる気持ちを起させることーこれが秘訣だ。
重ねて言うが、これ以外に秘訣はない。人を動かす文庫版(P27)
まず、人を動かす秘訣は、「自ら動きたくなる気持ちを起こさせること」とのこと。
では、「自ら動きたくなる気持ちを起こさせる」には、どうすればよいのか?
それは、人を動かす3原則を行うことです。
人を動かす3原則
D・カーネギーが言う「人を動かす」は、弱みにぎって脅迫したり、権力を得て命令したり、暴力で脅したりではな
ではなく、次のようなものです。
人を動かす原則1:批判も非難もしない。苦情も言わない。
人を動かす原則2:率直で、誠実な評価を与える
人を動かす原則3:強い欲求を起こさせる
書籍のタイトル「人を動かす」の原題は、「How to Win Friends and Influence People」です。翻訳ツールを使えば「友達を獲得して人々に影響を与える方法」と訳されます。暴力的ではなく、そのタイトルからイメージできるような3原則です。
では、D・カーネギーはなぜ上記の3つであると言っているのか、ここがポイントと思われる箇所を引用しましたので、見てみましょう。
批判も非難もしない。苦情も言わない。
およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばならない。
人を動かす文庫版(P25)
人を批評したり、非難したり、小言を言ったりすることは、どんな馬鹿でもできる。そして、馬鹿者に限って、それをしたがるものだ。
人を動かす文庫版(P26)
謝らない人がなぜ謝らないのかは、「自尊心と虚栄心」が原因でしょう。困ったものですが、自分にも当てはまることであるため、人のことは言えません。
しかも、相手が悪くても非難した方が馬鹿とのこと。これは、悪いことをした相手に謝罪をさせたいなら非難するなということでしょうか。私としては、謝らせたいですし、謝らないなら非難したいものですが、どうすべきなのでしょう?
率直で、誠実な評価を与える
優れた心理学者のウィリアム・ジェイムスは、「人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである」と言う。ここで、ジェイムスが、希望とか要望とか待望とかいう、なまぬるい言葉を使わず、あえて「渇望する」と言っていることに注意されたい。
これこそ人間の心を絶えず揺さぶっている焼けつくすような渇きである。他人のこのような心の渇きを正しく満たしてやれる人はきわめてまれだが、それができる人にしてはじめて他人の心を自己の手中に収めることができるのである。人を動かす文庫版(P34)
マズローの五段階欲求でいうところの承認欲求のことですね。たしかに相手を認めてあげなければ、相手が自分のために動いてくれるわけがありませんので、この主張も理解できます。
「悪いことをした相手に謝罪をさせたい」なら、非難せず、まずは相手を認めよ。ギリギリですが、ここまでは、理解できます。
強い欲求を起こさせる
もちろん、我々は、自分の好きなものに興味を持つ。生涯持ち続けるだろう。しかし、自分以外には、誰も、そんなものに興味を持ってはくれない。誰も彼も、我々同様、自分のことでいっぱいなのだ。
だから、人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。これを忘れては、人を動かすことはおぼつかない。人を動かす文庫版(P50)
アメリカの心理学者オーヴァーストリート教授の名著『人間の行為を支配する力』に次のような言葉がある。
「人間の行動は、心の中の欲求から生まれる・・・だから、人を動かす最善の法は、まず、相手の心の中に強い欲求を起させることである。商売においても、家庭、学校においても、あるいは政治においても、人を動かそうとする者は、このことをよく覚えておく必要がある。これをやれる人は、万人の支持を得ることに成功し、やれない人は、一人の支持を得ることにも失敗する」人を動かす文庫版(P51)
つまり、「相手に権力やお金などの利益を与える力がない私が、相手を動かしたいなら、行動したいという欲求を起させるしかないということ。そのためには、相手の好みと困っていることを把握して、解決法を教えてあげること。」このように言ってると理解したとしましょう。
すると、「悪いことをした相手に謝罪をさせたい」のなら、非難せず、相手のことを理解し、相手が望むものを与える力や相手の問題を解決する方法を教えてあげる力を持つことで、相手が「この人に謝りたい」という気持ちを持たせることができるということになります。
理屈は理解しますが、実行するのは難しいですね。「電車で肩をぶつけてきて謝らない親父」を謝罪させることはできなさそうです。そこはあきらめるとしても、D・カーネギーの「人を動かす三原則」は、日頃からの行いがあって、相手が動いてくれるものであると言えるでしょう。
では、その「日頃からの行い」ですが、ほかにもアクションプランがあります。「人に好かれる6原則」「人を説得する12の原則」「人を変える9原則」がアクションプランですが、数が多いせいか本書もボリュームがある本です。こう聞くとなんだか読むのが億劫になるかもしれませんが、実はそうでもないのです。
人に好かれる6原則
本書「人を動かす」は、目次を読めば何が言いたいかわかる本です。実際に目次のPART2「人に好かれる6原則」を見てみればわかると思います。引用してみましょう。
1 誠実な関心を寄せる
2 笑顔を忘れない
3 名前を覚える
4 聞き手にまわる
5 関心のありかを見抜く
6 心からほめる
このように、なんとなく言いたいことがわかったと思います。この1~6の原則で本文が約60ページ分となっておりますが、見出しだけでわかるため、60ページも読まなくていいのです。どういうことか気になるなら読めばいいのです。
さて、「人に好かれる6原則」ですが、非常に実行が難しいです。このような綺麗ごとではうまくいくか疑問であります。どんなに仲がよいと言っても本当に自分の味方であるかはわからず、むしろ自分の周りは敵だらけと言っても過言ではないこの世の中、日頃から、この「人に好かれる6原則」を意識して、人に接することができますでしょうか。なかなか難しいでしょう。
しかし、1つならできると思います。まずは1つでもいいからやってみるというのが現実的なところでしょう。
名前を覚える
実際、私が「人に好かれる6原則」の中で大事にしているのが「名前を覚える」です。
私はIT系の会社に勤めてますが、会社やプロジェクトの都合で、短いスパンで出向先が変わることが多いため、新しい職場で早くコミュニケーションを確立するために、職場の方の名前を早く覚えるようにしてました。知らない人に名前を覚えられてるってどうでしょう。まったく接点がないと気持ち悪いでしょうが、そのせいでしょうか、顔と名前を覚えることに関しては、割と記憶力がいい方だと思います。
でも、例外があります。俳優の福士蒼汰さんと中川大志さん、上地雄輔さんとつるの武さんは、なかなか顔と名前は一致しないことです。
人を説得する12の原則
では、次に目次のPART3「人を説得する12の原則」を見てみましょう。
1 議論を避ける
2 誤りを指摘しない
3 誤りを認める
4 穏やかに話す
5 “イエス”と答えられる問題を選ぶ
6 しゃべらせる
7 思いつかせる
8 人の身になる
9 同情を寄せる
10 美しい心情に呼びかける
11 演出を考える
12 対抗意識を刺激する
「人を説得する12の原則」も見出しを読めば何を言ってるかわかります。1~12で本文が約100ページ分となっております。ここも見出しで何を言ってるかわかるなら、100ページ読まなくてよしです。
さて、「人を説得する12の原則」ですが、私が意識しているのは、冒頭のような上司とのトラブルの反省から、「誤りを指摘しない」「人の身になる」の2つです。
誤りを指摘しない
私は、人の誤りを指摘することで、トラブルに発展し時間の無駄になることを、嫌と言うほど味わってきましたので、今となっては「誤りを指摘しない」を意識しています。もちろん、人間関係が壊れないと思われるときは誤りを指摘しますが、指摘したところで、誤りを認めない人が多いため、「誤りを指摘しない」方が無難です。「そういう意見も(やり方も)あるよね」でやり過ごすようにしてます。
人の身になる
次に「人の身になる」についてですが、これは社会人なら意識して当たり前かなと思います。私のことになりますが、一例をあげましょう。
私は、前述したとおりIT系の会社に勤めており、2018年現在、社内システムのサポート業務を担当しておりま、日々、社内ユーザーからのトラブル対応を行っております。
例えば、「ネットワークにつながらない」という問い合わせがあり、調査した結果、すぐには原因がわからなかったとします。この場合、通常のオペレーションなら、原因調査し、問題特定し、問題解消して事象改善という流れで進みます。そして解決までの間、社内ユーザーはネットワークが使えない状態が続きます。私たちにとってはその流れでよいのですが、社内ユーザーにとっては仕事ができない時間が長くなれば業務に影響が出てしまい不便です。
そこで「人の身になる」を考えるのです。まず、「ネットワークにつないだ後、何をしようとしたのか?」と、具体的な目的の確認です。すると大抵の場合、〇〇したいからと理由がわかります。であるならば、別の代替え案を用意することで目的が達成できるようになってしまえば、不便さは解消されます。すると、当初のネットワークにつながらないトラブルは、解決を急がなくてもよくなり、私たちも楽になります。
もし、自分たちのいつものオペレーションどおりに進め、解決に時間がかかった場合、まだかまだかと急かされてしまいますから、「人の身になる」を実行した方がよいわけですし、結果的に自分のためにもなるのです。
人を変える9原則
では最後に、目次のPART4「人を変える9原則」の見出しを見てみましょう。
1 まずほめる
2 遠まわしに注意を与える
3 自分の過ちを話す
4 命令をしない
5 顔をつぶさない
6 わずかなことでもほめる
7 期待をかける
8 激励する
9 喜んで協力させる
本当に見出しを読んだだけで何を言っているかわかる名著です。1~9で約50ページ分です。さて、この9原則の中で私が大事にしているのは、「自分の過ちを話す」「顔をつぶさない」です。
自分の過ちを話す
私は仕事の役割として、トラブル解決ができない人の対応をしているため、どうしても注意しなくてはならないことが多く、相手に対して使う言葉には気をつかいます。一方的に気をつけてくださいと言うだけだと、相手にとっては下に見られている感じするせいか、機嫌が悪くなるケースがあるからです。
そこで、注意するときは、自分も失敗したことを語ってから注意しております。「私も同じような失敗をしましたからわかります。次回以降ご注意いただけますと助かります」と言った方が、自分も駄目だったと言ってるわけですから相手を見下しているわけではなく、やわらかい印象を与えることができます。
自分が悪かろうとも注意されるだけで、嫌だという人はいます。注意されただけで攻撃されたと勘違いし、注意した人を根に持つ人もいますので、言葉選びには気をつけたいところです。
顔をつぶさない
そして、この本が一番言いたいことは、おそらく「顔をつぶさない」ではないでしょうか。言い方を変えれば「相手のプライドを尊重する(守る)」です。前述した「人を動かす3原則」で言っていることと合せて考えると、「顔をつぶさない」という相手のプライドを尊重することが、人を動かす上でのポイントになると思われます。
よくよく考えばわかることですが、「顔をつぶさない」=「相手のプライドを尊重する」ことを意識して、言動し行動しようとするなら、おのずと「人に好かれる6原則」「人を説得する12の原則」「人を変える9原則」の各原則ができてしまうからです。
私は、仕事ができないのに努力しない人への対応が厳しくなりがちですので、もしかしたら、相手の顔を潰したことがあるかもしれません。しかし、D・カーネギーに言わせれば、私が正しかったとしても、相手の顔を潰してはいけないことになります。この点は、理解できます。逆に、私が顔を潰されたら、激怒することが想像できるからです。
「顔をつぶさない」、、、このたった一つの原則こそ、社会で生きる人ならば、上司、部下、経営者、従業員、社員、派遣、お客様など立場は関係なく、守るべき原則と言えるでしょう。守るのが難しい原則でもありますが、守る努力は必要です。
D・カーネギーの「人を動かす」:まとめ
言い負かして勝利してもメダルはもらえない
今、思い出すと、自分が正しいと相手を言い負かすことばかり考えてたことを反省せざるを得ません。相手を言い負かし勝利したところで金メダルを貰えるわけではないですし、まして大事な時間や心を使うのは本当に無駄だと思います。
日々、楽に過ごしたければ、人間関係が円滑であるのも大事なことです。円滑であるためには、自分自身が一番偉い人であるか、この本の原則のような行動が取れているか、どちらである必要があるでしょう。
私は一番偉い人ではないため、本書の原則を参考にした方がよさそうです。もちろん、全部の原則を守るのは無理ですが、少しでも実行することで、時間を浪費する無駄なトラブルから無縁になればよしです。相手が悪いことをしても、非難したり、謝らせるのはやめたいと思います。謝ってくれるような関係になるよう日頃の積み重ねを大事にします。
繰り返しになりますが、とくに、人の「顔をつぶさない」は究極に大事なことだと思います。自分が強い立場になっても。相手の「顔をつぶさない」、上司とトラブルになっても「顔をつぶさない」、相手が子供であっても、「顔をつぶさない」。
この「顔をつぶさない」というたった一つの原則を常に実行すること。ここで紹介した全部の原則の実行は無理でも、まずはこのたった一つの原則を守るために「顔を潰す行為」を減らすことから心がけたいと思います。