メンタルヘルス



大人の発達障害の特徴がある人への接し方を知り、内にある優しさを目覚めさせよう。

少し変わった人が職場にて、ストレス要因になっていませんか?

その人の言動や行動が悪気がないことは理解しつつも、やっぱり我慢できないし、できれば一緒に仕事したくない。なんとかしてほしくて上司に相談しても、「うまいことやってよ」と言うだけで、解決せず。

結局、その人に冷たい態度で接してしまい、そんな自分に対しても自己嫌悪。態度を改めたいと思うけど、顔を見たり会話したりすると、ついイライラしてしまう。そしてまた自己嫌悪。

そんな日々が続いていると、自分のメンタルが駄目になってしまいそうですね。

もし、そんな風に悩まれているなら、ぜひ参考にしていただきたい本があります。

それが、今回紹介する大人の発達障害です。

 

大人の発達障害について

大人の発達障害とは何か?理解するのが難しい

私は、EAP(従業員支援プログラム)というカウンセラーの勉強をしたのですが、発達障害の学習はわけがわからず苦手でした。その理由の一つに、発達障害の種類や分類が複雑だったからです。例えば次のリンク先をご覧ください。さまざまな特徴があって、覚えるのが大変ですね。

そこでわかりやすく知識を深めることができそうな本を何冊か読んだところ、一番わかりやすかったのが本書でした。

大人の発達障害の方と接し方の難しさ

発達障害を理解することより難しいのが、発達障害の人とのコミュニケーションです。発達障害なのか、ただの嫌な人なのか、わかっていないと自分自身が傷ついてしまいます。

そうならないためにも、自分の苛立ちの原因が、相手が「発達障害」だからなのか、それとも「ただ単に嫌な人」だからなのか、まずは、見分けるためにも発達障害の特徴を知っておく必要があると思います。もし、発達障害の方に対し苛立ちを感じていたなら、反省したいもの。

ただ、発達障害の人も「周りとうまくできないこと」に、苦しんでいる可能性があります。その点を理解してあげるためにも、発達障害とは何か押させておく必要があるでしょう。

参考になりそうな点を、本書からピックアップしたいと思います。

大人の発達障害、変を見分ける3つの特徴

職場にいる変わっている人。その変わっている人が発達障害かどうか、見分けるための3つの特徴は、本書P27が参考になります。

変わっているのかどうかを見極めるのは、変わっている点が、次の三つの領域の問題なのかをまず考えることです。つまり、三つの「目のつけどころ」を持つようにするというわけです。
その三つの目のつめどころとは、以下のとおりです。

①社会性はあるか?
他人とうまく付き合えるかどうか。場の空気や間を文脈に沿って理解し、他者とコミュニケーションが取れるかどうか。
②意思疎通はできるか?
言葉や表情、身振りを使って他人と意思疎通をはかれるかどうか。
③想像力のズレや強いこだわりがあるか?
状況に応じて他人の考えや気持ちを推し量ることにズレが生じやすい傾向がないか。その結果、柔軟な行動が取れず、物事に必要以上にこだわる傾向がないか。

この三つの領域は、自閉症を持つ母親であり、自閉症研究の第一人者でもあるイギリスのローナ・ウィングという医師が唱えたものです。ウィングは、「ASD」(31ページに後述しますが、ASDはPDDとほとんど同じ概念です)の「三つ組の障害」を厳密には以下のように定義してます。

①社会的相互交渉の障害
②コミュニケーションの障害
③想像力の障害とその結果としてもたらされる常同・反復的行動パターン

大人の発達障害 アスペルガー症候群、AD/HD、自閉症が楽になる本(P27~28)

ちょっと抽象的でわかりずらいですが、私は次のようなイメージを持っています。

①については、「空気が読めない人」と考えればよさそうです。暗黙の了解がわからないというか、「おいおい、ここでそんなこというか?」そんなヒヤッとすることを言ったりする人のことでしょう。

②については、「言葉のやりとりが下手な人」と考えればよさそうです。何度もオウム返しを繰り返す、冗談が通じないなど、言葉の意味を取り違える人が該当しそうです。

事例として、本書であげられていたのが、「暇だったら来てください」という社交辞令を鵜呑みにして、本当に毎回遊びに来る人が紹介されてました。

③については、一度覚えた手順を絶対変えない、臨機応変がきかないなど、異様に一定の手順にこだわるケースでしょう。例えば、毎日絶対に同じ道を通る人などです。

本書では、アロハシャツにこだわりを持っていて、駄目と言われても会社に着ていく人が事例として紹介されています。

これら3つの特徴のどれかではなく、3つとも持っていて、誰かとのコミュニケーションで問題になっているようでしたら、その方は「自閉症スペクトラム障害=ASD」かもしれないのです。そう考えることができれば、イライラして自分が疲弊し消耗するのではなく、上手に対処する必要があると判断できるようになります。

大人の発達障害の対応方法

大人の発達障害は治るのか?

「3つの特徴はわかった。で、発達障害は治るのか?」「どうやって対処すればいいのか?」この点は、気になるところだと思います。本書P41から参考になるところを引用してみましょう。

 発達障害には、先天的な脳の機能のかたよりによって生じる独特な行動の特徴があります。その「特徴」によって、周囲の人とうまく付き合いながら、社会生活を送ることが難しくなります。
そのため、発達障害を「治す」ことは目標となりません。「治す」「治さない」という考え方は、なじまないといってもいいでしょう。
それよりも、社会生活を円滑に送るための「対処法を身につける」ことにより、日常で困ることをへらし、仕事に就き、自立した生活を送っていくことが目標です。

大人の発達障害 アスペルガー症候群、AD/HD、自閉症が楽になる本(P41~42)

病気と言ってくださった方が対応しやすいかもしれませんが、発達障害は特徴なのです。「先天的な脳の機能の偏り」ここが大事なポイントです。病気ではないのです。この点を理解するのが難しいところですが、特徴ですから、治すとか治さないという話ではなく「対処」するになるのです。

大人の発達障害に対する接し方

発達障害の方と上手に付き合うのは、個人としても組織としても本当に難しい課題だと思われます。だからこそ、一人でも多くの方が発達障害に関する知識を持ち、発達障害への理解を深める必要があるでしょう。そして、その知識は、自分と相手を救うことになります。

知識が自分と相手を救う例として、その象徴的なやりとりを、本書P185~186の一部から引用します。自分はアスペルガー症候群かもしれないと思った雄介さんが、著者に相談にきました。文中の近藤さんは、雄介さんの上司です。

「近藤さんと、話し合われたということはうかがっています。そのうえでお聞きしますが、今、ご自身で困っていることや疑問に思っていることは何かありますか?」
「今、自分自身で困っていることですか?」
雄介さんは、続けて答えます。
「アレルギー性鼻炎と妻の両親の介護をどうするかで困っています」
「え?アレルギーですか?」
「そうです。今、困っていることはアレルギー性鼻炎で内服薬が出ているのですが、これを飲むと眠くなって困ります。それと、妻の両親が、昨年、相次いで脳梗塞で倒れまして、足に軽い麻痺が残りまして、それを・・・・・」
自分自身の困っていることを話し出した雄介さんを必死に制して、私は改めて説明し直しました。
「すみません。せっかくお話していただいていているのに、質問を改めます。近藤さんとの話し合いで、ご自身がアスペルガーではないかとお話しされたんですよね?」
「はい。そういうふうに話しました」
「それで、アスペルガーに関連して、ご自身で困っていることは何かありますか?それも状況を限定しましょう。仕事をしているときに限定して教えてください」
「ああ、なるほど。その話の中で困ることですね・・・。私は、こういうことが多いんです。会社でも『雄介はちょっと変わってる』みたいにいわれていて、自信を失っていたんです。最近、偶然、妻が読んだ本で、アスペルガー症候群について知り、私に似ている、というんです。それで、その本を読んでみて驚きました。本に出てくる人とまったくいっしょというわけではありませんが、私のことが書いてあると思うことが多くて・・」

こういう形で、雄介さんとの話は始まりました。
この私との最初の会話のやりとりにも、雄介さんのコミュニケーションの特徴が現れていました。ただし、これは文脈を読んで会話することが苦手、という特徴を理解して話をすべきなのに、その配慮をしなかった私の側に問題がありますその点では、私は専門家として雄介さんに謝らないといけません。

大人の発達障害 アスペルガー症候群、AD/HD、自閉症が楽になる本(P185~186)

私はこの一文を読んだとき、胸が熱くなりました。今の世の中、こういうやさしさが必要なのです。

この対応は、3つの特徴知っていればこそできることあり、逆に3つの特徴を知らなければ、「何を言っているのだお前は!アレルギーの話なんてしていないだろ!!」と、怒ってしまう状況です

引用文青字の部分に注目してください。著者は即座に自分の言い方を変え、相手がわかりやすい言い方に変更してます。知識があるからこそ、できる対応です。そして、自分が悪かったと反省しているところが素晴らしいですね。

こういう対応こそが、治療できないと言われる発達障害に対して、自分ができることだと思います。

大人の発達障害と二次障害

大人の発達障害は二次障害に気をつけるべき

「発達の障害の知識を得てほしい。3つの特徴を覚えて、正しい対応をしてあげてほしい。」そうお願いしているのは、正しい対応方法を学んでほしいだけではございません。二次障害も防いでほしいからでした。
3つの特徴が原因で、発達障害の方が周りの人とぶつかれば、以下のような二次障害といえる心の問題が現れてくる可能性があります。

①抑うつの状態
②不適応の状態
③対人恐怖や対人緊張の高まり
④心身症の症状
⑤自己評価の低下

もし、自分の同僚が、職場の誰からも理解されず、人知れず悩んでしまい、抑うつ状態になってしまっていたら・・・見ていてつらくなりませんか?

好き好んで発達障害で生まれたわけではないのに、人から嫌われ、いじめのようなことをされ、それでもなんとか我慢してたけど、心は耐えきれなくなり病になってしまったとしたら・・・。

そんなつらい人生を、発達障害の方に背負わせてはいけません。

もちろん、発達障害の方と接している方だって大変でしょう。手がかかっていることで、時間にして倍以上、仕事が忙しくなっているかもしれませんし、通勤途中、食事中、寝る前、その人への怒りで頭がいっぱいであり、ストレスが溜まってしまうかもしれません。

大人の発達障害、知識はあなたと相手を助ける

でも、それは発達障害に関する知識がなかったからであり、知識があれば怒りも軽減され、言い過ぎてしまいそうになったときはブレーキをかけることができます。そのブレーキが大事なのです。

しかし、学んで知識を得るといっても、専門用語の理解は難しいです。例えば、本書のP29~38の専門用語を羅列してみるとわかります。

・自閉症スペクトラム障害
・広汎性発達障害(PDD)
・アスペルガー症候群
・注意欠陥多動性障害(ADHD)
・学習障害(LD)
・発達性強調運動障害

難しい言葉ばかりですね。これらの専門用語の意味を知っているとしたら素晴らしいですが、知らない方がほとんどでしょう。しかし、専門家のような知識を得る必要はないと思います。一般の方は、3つの特徴から発達障害かどうかを見抜いて、少しでもストレスが少なくなるような対応方法を身に着けていただくことの方が大事だと思います。

そして何よりも、その知識から生まれる優しさが必要なのです。

そういう意味では本書は事例が多く、著者の対応方法は学ぶべき点がたくさんあり参考になります。発達障害への理解を深め、自分のストレスの軽減のためにも、本書から知識を得て、実生活に役立ててほしいです。

大人の発達障害について:まとめ

大人の発達障害の特徴がある方と働いている人は、本当に困っていると思います。具体的な対応方法を知らなければ、しんどいだけです。イライラして、相手に八当たりしてしまうこともあるでしょう。

しかし、発達障害の知識を得ることで、なぜ相手がそのような言動や行動をするか理解でき、ふさわしい対応をすることができれば、自分と相手の二次障害を防ぐことができるのです。

本書は、事例が多く参考になりますし、著者である備瀬哲弘先生の精神科医としての対応例は非常に参考になります。自分の特徴はもしかしたら発達障害なのかもと思っている人、あるいはすでに大人の発達障害と診断された人にもおすすめです。

自分のため、相手のため、発達障害への理解を深めていく上で入門編として読み、良い接し方を学んでみてはいかがでしょう。イライラ接するのではなく優しく接してあげるためにも。

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