メールを開いた時、いきなり部下や同僚から「もう死にたい」というメールが来ていたら、どう返信しますか?
きっと頭を抱え一人悩んでしまっているのではないでしょうか。
組織の中において、メンタルヘルス担当者になっている方の苦悩が分かる方なんて、なかなかいないでしょう。ずっとネガティブなメールを見続けて日々疲弊していると思いますし、「適切な対応しなければ本当に死んでしまうかもしれない。」そんな恐怖があると思います。
せめてどう対応すればいいか、適切な対応は何か。そんな悩みがあるとすればその答えとして、メンタルヘルス担当者の力になるおすすめな本を紹介します。
山本晴義 著書「ドクター山本のメール相談事例集―メンタルヘルスのヒントが見える!」です。
目次
メンタルヘルス:職場対応の難しさ
メンタルヘルス担当者には、さまざまな苦悩があります。
メンタルヘルス担当者が病気になってしまう
組織の中では、健康な人の相手だって頭痛の種です。ですから、メンタルヘルス担当者はもっと頭が痛いはず。
メンタルヘルス担当者は、医者ではありません。でも命を扱ってるようで、なんだか対応する怖くないですか? 私だったら怖い。毎日心配事だらけで食事が喉を通らないと思います。
とくにメンタルヘルス担当者として、慣れていない人は大変です。どう対応していいかわからないでしょうし、「自分の返信メールの言葉が相手を死なせてしまうきっかけになるかもしれない。」そんあ恐怖もあるでしょう。すべて自分のせいにされるかもしれない不安だってあるかもしれません。
そう悩んでしまうことで、メンタルヘルス担当者が病気になってしまわないよう注意が必要です。
すべての社員を助けたいと思っていないか?
すべての社員を助けたいという気持ちがあっても助けてあげれないことに悩んでしまう人もいるでしょう。そんな気持ちをお持ちな方、その考えは素晴らしいことですが注意も必要です。
例えば、次のような感情はお持ちですか?
・助けたい感情が強く、助けられなかったことで自分自身の落ち込みが激しい
・もっと自分を頼って、なんでも相談してほしい
もしそんな感情があるなら、メサイアコンプレックス(メサイアコンプレックス – Wikipedia)ではないかとご自分を見つめることも大事なことです。
相手を助けることで自分の自尊心を満たしたり、自尊心を満たすために相手に依存させるようなことをしたり、そんな感情があるかどうか気をつけ、もし心当たりあるなら改めましょう。
それともう一つ。
どんなに頑張ってもすべての社員を助けることはできません。なぜなら原因が会社とは限らないからです。相手の家庭の問題だったら、会社の人間には踏み込めないでしょう。
すべての社員を自分が助けてあげなければならないと気負わずに組織で対応していきましょう。
決めた役割以外のことが原因なら、あなたのせいではない
また、万が一自分が対応した後に自殺されてしまった場合、自分のせいではないかと悩んでしまいませんか?
もし悩むなら、その後悔からご自身を責めてしまい、ご自身がメンタルヘルス不調にならないよう気をつけてください。
また、もし組織のメンタルヘルス担当として決められた役割を行ったのでしたら、あなたのせいではないです。でも、役割が明確になっていなければ、自分のせいだと後悔するかもしれません。
後悔しなくていいように、専門機関の指導を受けてご自身の役割を決めておくのが大事なことです。
と、こんなことが言えるのも、本書を読んだからなのです。
メンタルヘルス担当者の役に立つメール相談事例集
メンタルヘルスのメール相談が7ジャンル28事例
本書は、メンタルヘルスに関するメール相談の事例集です。
メンタルに問題を抱えている本人、あるいはその恋人、上司の方、メンタルヘルス担当者の方など様々な方からのメール相談に対する事例が28もあります。
「メンタルヘルス検定の資格を取得したけど、実際にどうメール対応していいのかわからない。」
きっと、そんなメンタルヘルス担当者の役に立つと思います。
なぜなら、どんな問い合わせ本文に対し、どんな本文で返信したのか、その対応例が28事例あるからです。どんな風に共感しどんな言葉で返信し、多くの命を救ったかがわかります。
慣れない人は、本書の本文を参考にしてテンプレートのように使ってもよいのではないかと思います。
著者:山本晴義先生について
著者である山本晴義先生は、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長であり、厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員会の委員として活動されているメンタルヘルスのエキスパートです。
勤労者メンタルヘルスセンターは、勤労者メール相談を平成12年5月より開始し、センター長である山本晴義先生が全てメール相談対応され、原則24時間以内に返信されているようなのです。
そんな山本晴義先生が、年間8000件にものぼる多数のメール相談の中から、7ジャンル28パターンに整理し、実際の勤労者の生の声のやりとりをまとめたものが本書なのです。
読んでいて丁寧に言葉を選び返信されているのが伝わりますが、同時にパターンがあることに気づきます。さすがに年間8000件に対応するとなると、ある程度テンプレートのような対応方法があるのかもしれません。
人の命を救えるなら、その対応方法を知ることができるのは、とても価値あることだと思います。
事業場外資源の連絡先の一覧があります
本書の最後に事業場外資源の一覧があり、使い勝手が良さそうです。
事業場外資源とは何でしょうか?それはこちらのページで確認できます。
掲載されている主な相談先一覧は、次の連絡先です。
・勤労者こころの電話相談
・労災病院(勤労者メンタルヘルスセンター)
・産業保健推進センター
・メンタルヘルス対策支援センター
・精神保健福祉センター
心の問題の相談先についても、どんなところに相談できるかわからないと困りますが、本書はそれがまとまっていて、非常に助かります。
ただし似たような機関が多くて、どこに問い合わせしていいのかわかりずらいですから、「こころの耳」をご参考にされるといいかもしれません。
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ドクター山本のメール相談事例集まとめ
メンタルヘルスは予防が肝心
厚生労働省がストレスチェックを義務化したこともあり、メンタルヘルス対策に力を入れる企業は増えてくることでしょう。
メンタルヘルス担当者ではないとしても、メンタルヘルスの知識は押さえておく必要があると思います。その知識は、自分の身近なひとだけでなく自分自身の心を守ります。
心の問題で体に症状が出たときに、「まあ、大丈夫だろう」と放置するか、「抑うつの症状かもしれない」と気づくかは、大きな違いでしょう。後者なら予防につながります。
メンタルヘルスのメール相談対応のお手本
山本晴義先生のメール相談対応を読んでみると、お手本のような対応に心が洗われます。
一方で気づいたことがあります。
それは、メンタルヘルスの相談対応は、「優しい人でなくてはできない仕事だ」という私の考えが思い違いだったということです。
優しさが良い対応をしているのではなく、正しい知識が良い対応をしており、自分の性格を変える必要はなく、正しい知識で対応すれば良いのですね。
部下からのメール相談にどう対応すれば悩み怯えてしまうことがないよう、身近に置いておくと心強いと思う一冊でした。