記事内に広告が含まれています
職場で部下や同僚からのメールを開いたとき、「もう死にたい」と書かれていたら、どう対応しますか?
頭を抱えどう回答するか言葉選びに悩むか、それとも上司に相談するか。いずれにしても、早く対応しないと手遅れになってしまうかもしれない状況では、抱えるストレスも半端ではないでしょう。
そもそも、職場でメンタルヘルス担当者になっている方は、日々ネガティブなメールを見続けて疲弊されていると思われますし、「適切な対応しなければ、死なせてしまうかもしれない。」そんな重圧があると思います。
せめてどう対応すればいいか、適切な対応は何か。その解決策として、おすすめな本があります。年間8000件のメール対応をしているという山本晴義先生の著書「ドクター山本のメール相談事例集―メンタルヘルスのヒントが見える!」です。
目次
ドクター山本のメール相談事例集について
職場でのメンタルヘルス対応の大変さ
私は職場のメンタルヘルス担当ではございませんが、自分自身のメンタルが弱ってきた時期があり、ほっとくと鬱病になってしまうのではないかと心配になったため、メンタルヘルスの勉強をしました。(メンタルヘルス検定二種の合格しました)
学びの中でわかったことは、メンタルヘルス担当の業務の大変さです。主に人事や総務の方か、現場のリーダーなどがメンタルヘルスの担当を兼任されているかと思いますが、通常業務にメンタルヘルス担当としての業務も乗っかってくれば、どれだけ大変か想像できるかと思います。
メンタルヘルス担当者が病気になってしまうかも
例えば、メンタルヘルス担当者は、医者ではない方がほとんどだと思いますが、医者のように人の命を扱ってるようで、対応が怖くなることもあるかと思います。
職場では、健康な人の相手だって頭痛の種です。ですから、心が病んだ人の対応をするメンタルヘルス担当者はもっと頭が痛いはず。とくに、メンタルヘルス担当者として、慣れていない場合は大変です。どう対応していいかわからないでしょうし、「自分の返信メールの言葉が相手を死なせてしまうきっかけになるかもしれない。」そんな恐怖もあるでしょう。何か起きたとき、自分のせいにされるかもしれないという不安や責任もありますよね。
そう悩みが重なれば、メンタルヘルス担当者が病気になってしまうかもしれないのです。
すべての社員を助けたいと思ってしまう?
また、メンタルヘルス担当者として、次のような感情はお持ちなら注意が必要です。
・助けたい感情が強く、助けられなかったことで自分自身の落ち込みが激しい
・もっと自分を頼って、なんでも相談してほしい
もし、「私が助けなきゃ」という気持ちがあるなら、その気持ちはメサイアコンプレックス(メサイアコンプレックス – Wikipedia)ではないかとご自分を見つめることも大事なことです。
相手を助けることで自分の自尊心を満たしたり、自尊心を満たすために相手に依存させるようなことをしたり、そんな感情があるかどうか気をつけ、もし心当たりあるなら改める必要があります。
それともう一つ。
どんなに頑張ってもすべての社員を助けることはできません。なぜならその社員のメンタル不調の原因が職場にあるとは限らないからです。その社員の家庭が原因だったら、職場の人間には踏み込めない領域です。
すべての社員を自分が助けてあげなければならないと気負わず、個人ではなく組織として対応していきましょう。
決めた役割以外のことが原因なら、あなたのせいではない
また、万が一自分が対応した後に自殺されてしまった場合、自分のせいではないかと後悔し悩んでしまうことがあるかもしれません。もし自責の念が強い傾向があるなら、ご自身を責めてメンタルヘルス不調になってしまうかもしれませんので、普段からメンタルヘルス担当者としての自分のあり方や役割を決めておきましょう。
職場のメンタルヘルス担当として決められた役割を行った上で残念な結果になったのでしたら、それは誰のせいでもありません。一方で役割が明確になっていなければ、自分のせいだと後悔するかもしれませんよね。ですから、後悔しなくていいように、専門機関の指導を受けてご自身の役割を決めておくのは大事なことなのです。
このようにメンタルヘルス担当にはさまざまな苦悩があると思いますが、もし職場の体制が不十分だと感じたなら本書を手元に置かれてはいかがかなと思います。
メンタルヘルス対策に関わる人が健康であること
一人で解決できる問題ではない「ドクター山本のメール相談事例集―メンタルヘルスのヒントが見える!」(P34)
職場でのメンタルヘルスの取組みに役立つ7ジャンル28事例集
本書は、メンタルヘルスに関するメール相談の事例集です。
メンタルに問題を抱えている本人、あるいはその恋人、上司の方、メンタルヘルス担当者の方など様々な方からのメール相談に対する事例が28もあります。具体的には以下のようなジャンルになっております。
1.自殺関する事例(4)
2.ストレスマネジメントを勧めた事例(4)
3.うつ病に関する事例(5)
4.職場復帰(復職)に関する事例(4)
5.海外からの相談に関する事例(3)
6.震災・被災・避難関連の事例(4)
7.その他の事例(4)
⇒アルコール依存症、セカンドオピニオン、パワーハラスメント、無職の男性など
「メンタルヘルス検定の資格を取得したけど、実際にどうメール対応していいのかわからない。」
きっと、そんなメンタルヘルス担当者の役に立つと思います。どんな問い合わせ内容に対し、どう返信したのか、その対応例が28事例あるからです。どんな風に共感しどんな言葉で返信して、多くの命を救ってきたかがわかります。
メンタルヘルスに慣れてない人は、本書の本文をテンプレートのように使ってもよいのではないかと思います。
著者:山本晴義先生について
著者である山本晴義先生は、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長であり、厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員会の委員として活動されているメンタルヘルスのエキスパートです。
勤労者メンタルヘルスセンターは、勤労者メール相談を平成12年5月より開始し、センター長である山本晴義先生が全てメール相談対応され、原則24時間以内に返信されているとのこと。
そんな山本晴義先生が、年間8000件にものぼる多数のメール相談の中から、7ジャンル28パターンに整理し、実際の勤労者の生の声のやりとりをまとめたものが本書なのです。
読んでいて丁寧に言葉を選び返信されているのが伝わりますが、同時に返信の仕方にパターンがあることに気づきます。さすがに年間8000件に対応するとなると、テンプレートのような対応方法があるのでしょう。人の命を救ためにも、その対応方法を知ることができるのは、価値あることだと思います。
事業場外資源の連絡先の一覧があります
本書の最後に事業場外資源の一覧があり、使い勝手が良さそうです。
事業場外資源とは何でしょうか?それはこちらのページで確認できます。
掲載されている主な相談先一覧は、次の連絡先です。
・勤労者こころの電話相談
・労災病院(勤労者メンタルヘルスセンター)
・産業保健推進センター
・メンタルヘルス対策支援センター
・精神保健福祉センター
心の問題の相談先についても、どんなところに相談できるかわからないと困りますが、本書はそれがまとまっていて、非常に助かります。
ただし似たような機関が多くて、どこに問い合わせしていいのかわかりずらいですから、「こころの耳」をご参考にされるといいかもしれません。
働く方ならこちら
事業者ならこちら
ドクター山本のメール相談事例集:まとめ
職場のメンタルヘルスは予防が肝心
厚生労働省がストレスチェックを義務化したこともあり、メンタルヘルス対策に力を入れる企業は増えてくることでしょう。
メンタルヘルス担当者ではないとしても、メンタルヘルスの知識は押さえておく必要があると思います。その知識は、自分の身近なひとだけでなく自分自身の心を守ります。
心の問題で体に症状が出たときに、「まあ、大丈夫だろう」と放置するか、「抑うつの症状かもしれない」と気づくかは、大きな違いでしょう。後者なら予防につながります。
メンタルヘルスに関するメール相談対応のお手本
山本晴義先生のメール相談対応を読んでみると、お手本のような対応に心が洗われます。
一方で気づいたことがあります。それは、メンタルヘルスの相談対応は、「優しい人でなくてはできない仕事だ」という私の考えが思い違いだったということです。優しさが良い対応をしているのではなく、正しい知識が良い対応をしており、自分の性格を変える必要はなく、正しい知識で対応すれば良いのです。
部下からのメール相談にどう対応すれば悩み怯えてしまうことがないよう、手元に置いておくと心強いと思う一冊です。メンタル不調の方やご自身の心を守るためにも一読されてはいかがでしょうか。