文章力の上達には、他者との対話が大事なのはなぜか? それは、他者との対話の中から自分のオリジナリティ生まれるからであるということを前回書かせていただきました。逆に言えば、最初からオリジナリティがないからと言ってあきらめる必要はないと受け止めることができ、オリジナリティがなくて進まないと悩んだことがある私には、目から鱗が落ちる思いでした。
あとは、自分のオリジナリティをどう言葉にしていくかです。前回(⇒こちら)は「自分のテーマ」について書きましたが、今回は「自分のことばで語る」について、本書から学び得たことを書きたいと思います。
目次
自分のことばをつくる②
自分のことばで語るには
魔法の杖は万能ではないことを知る
自分の思考を、どう表現するか。テンプレートやツールを使うという方法もあると思いますが、どうやらそれだけでは間違いのようです。
この「思考」と「表現」による行ったり来たり、すなわち往還が、問題意識を持ち、テーマを発見していくための、唯一の方法だ、ということです。
言い換えれば、このような当たり前の地道な作業でしか、「思考」と「表現」は活性化しないということなのです。しばしば〇〇メソッドとか、〇〇法というような魔法の杖が紹介されることがありますが、それらが万能ではないことはもはや言うまでもないでしょう。自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術(P89)
「しばしば〇〇メソッドとか、〇〇法というような魔法の杖が紹介されることがありますが、それらが万能ではないことはもはや言うまでもないでしょう。」とは、まさに私のこと。この一文にはいい意味でショックです。
私はさまざまなテンプレートを使って文章を書く練習もし、それらでしっくりこないときは、自己流テンプレートやツールを作成したこともありました。そのテンプレートやツールを使って文章が書けることもあるのですが、書けないこともあるため、パフォーマンスに納得できなくなり、魔法の杖探しをしてしまうのです。
でも、そんな私の行動は、著者の言うとおり万能ではないのです。しかも著者の言うように「思考」と「表現」をいったりきたりする対話が大事であることを、まさに経験してしまったのです。
その経験とは、私の娘が夏休みの課題で読書感想文を書くときのことになります。
本を読み終えた娘は、原稿用紙に書く作業が進まず、悩んでました。そこで私にどう書けばよいか相談にきました。
私は、娘にいくつか質問しました。すると、娘は閃いたようで原稿用紙に書き始めました。しかし、しばらくしてまた進まなくなり、私に相談してきました。そこでまた娘と対話すると、何か閃いて書き始めました。結局、このような私との対話のやりとりをしながら、娘は原稿用紙3枚分の読書感想文を完成させたのです。
この出来事こそ、まさに著者の言うとおり、対話しながら自分のことばを見つけたいい例だと思います。
ただ、テンプレートやツールを使えばいいのではないのですね。小手先の技術よりも大切なのは、「思考」と「表現」を往還し、自分のことばを創る作業を繰り返すこと。そのうえで、テンプレートやツール使うことが、文章力上達につながる道なのでしょう。
トピックとテーマは違うということ
テーマははっきりしているのに、書けない場合、そもそもそれはテーマではなく、トピックの可能性があります。
トピックとは、出来事や事柄の話題のことであり、テーマとは、その課題を検討するための主題です。
自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術(P102)
たとえば、さきほどの「グローバル化」というトピックでは、「日本のグローバル化と外国語教育」「グローバル化と日本語」「日本のグローバル化とグローバル・スタンダード」など思いつくものがあがってくるでしょう。
この中で何を選ぶかは、あなたの中にあるテーマと連動するはずです。自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術(P105)
例えば「愛」について書けという課題があり、何も言いたいことが思い浮かばない場合、そもそも「愛」はトピックだという視点が必要です。「愛」ではなく、「愛よりもAI」について書けだったらどうでしょう。これなら「愛」よりも書けそうな気がしませんか?
トピックとテーマは違うという視点、私はそのように考えたことがなかったため、目から鱗が落ちました。もちろん、今までもトピックからテーマを創っていたこともあると思いますが、あくまでもそれは無意識でのことです。今回、はっきりとトピックとテーマの違いを定義できたことにより、意識的にトピックからテーマを創る思考が生まれました。今後、文章力の上達につながると思います。
自分ごとにすること
トピックとテーマが違うことはわかりました。では、どのようにすれば、トピックからテーマを創ることができるのでしょうか?
ところが、あなたは、その「言いたいこと」がなかなか見い出せないでいる。このことが表現するときに立ちはだかる、最初で最大の問題なのです。
これは、あなたの中に、自分のテーマ自体が明確になっていないからなのです。
では、この課題は、どのようにしたら乗り越えることができるのでしょうか。
ここで重要なのは、その対象(話題や事柄)をまず「自分の問題として捉えているか」ということです。自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術(P105~106)
トピック(話題・事柄)を、自分ごと(自分の問題)として捉えるというのは、少し難しく感じるかもしれませんが、チャレンジしてみると案外うまくいくことに気づかれると思います。
例えば、「グローバル化」というトピックを自分ごととして捉えてみたいと思います。
私の場合、英語が話す必要があるという課題があり、私は英語が話せないという問題があります。すると「日本のグローバル化と英語表記について」というテーマが浮かびました。
内省してみると「世界がグローバル化に進み、海外の優秀なWEBアプリの情報もが簡単に入手でき、購入も楽にできる時代になった。私が、使用しているWEBアプリは英語の表記のものが多いのだが、私はまったく英語が話せないため、操作に困ることが多い。この問題の解決には、わからない単語をいちいち翻訳するか、操作慣れするしかない。このように考えてみると、同じように困っている日本人のために、英語の画面でも操作できるような図解の手順書のようなものを作ったら喜ばれるかもしれない。英語がわからないことプラスにして、かゆいところに手が届く手順書ができないだろうか。こういうやり方もグローバル化への対応になるかもしれない。」と、なんとなくですが書けることが浮かびます。
あとは、この考えを他者に表現してみて、どんなオリジナリティが生まれるかです。
例えば職場で同僚に話してみます。私は職場で、社内システムの運用保守を担当してますが、外国からきて働いている方が日本語がわからず困っており、英語の手順書がほしいと希望されることが多いです。すると、英語の手順書が必要だと課題が生まれるわけです。しかし、同僚は「日本に来ているのだから、外国から来た方が日本語を覚えるべき。わざわざ英語の手順書を作る必要はない。郷に入っては郷に従えだ」という意見をいただきます。ならば、「今の手順書に画像を増やして、視覚でわかりやすくする方法はどうか。これなら、外国から来た方だけでなく日本人にも親切かもしれない」という私の意見が生まれます。
最初は、個人的な課題として英語画面のWEBアプリの手順書が必要と思っていたわけですが、英語の手順書作成や、日本語画面だけど外国人の方が利用できるような手順書をつくっても便利かもしれないというところまで話は広がりました。あとは、「なぜ、そこまでして手順書を作ってあげたいのだろうか」「なぜ、同僚は、郷に入っては郷に従えと考えているのか」など、なぜの質問を繰り返せば、深堀りしていくことができます。
しかしながら、文章を書くうえで必要なオリジナリティは、すでに生まれてきているのです。「グローバル化」というトピックにおいて「日本のグローバル化と英語表記について」テーマが生まれ、郷に入っては郷に従えもよいが「英語ができなくても、画像を使って視覚でわかる手順書を創ることはできる。これだって、今の自分にできるグローバル化対応なんだ」という意見(自分のテーマ)が生まれたからです。
そして、お気づきかと思われますが、即興ではありましたが、上記の赤字文章から青字文章まで、なんとなく文章が書けてしまいました。上記のようなプロセスを繰り返せば、自分のことばをつくることができる。これが著者が主張されていることなんだと思います。
自分のことばをつくる②:まとめ
魔法の杖より現実的な行動
文章テンプレートやツールを使用しようしても、文章が書けない原因は、文章テンプレートやツールを魔法の杖だと思っていたことでした。
しかし、魔法の杖なんてないのです。
大事なのは、トピックとテーマの違いを理解し、トピックを自分ごとして捉え、他者との対話の中から、自分のテーマや言いたいことを浮かび上がらせる現実的な行動だったのです。
まとめますと、「何か表現するということは、自分のテーマを自分のことばで語ることである」このことを実行するには・・・
文章テンプレートやツールに頼る前に、まずはトピックとテーマの違いを認識し、トピックを自分ごとにしながら、他者と対話し、そのプロセス中で自分テーマを生まれたら、なぜの質問を繰り返しながら、自分の言いたいことをはっきさせていくことです。
もし、他者との対話が難しいなら、WEBでテーマについて検索し、さまざまな人の意見を見聞きしてみるのもありだと思います。それでも、自分の言いたいことは生まれてくると思うからです。
このようにまとめてみましたが、これはあくまでも私の意見です。おそらく、私以外の人が読めば別の結論を出すことができると思います。文章上達が頭打ちの方は、本書あるいは著者の別の本を読んでみると良いかもしれません。