「メタ思考って何でしょう?抽象化とどう違うのでしょうか?」もし、そう質問されたら、私は上手に説明できません。
少し理解したくらいで、「抽象度を上げて考えなよ」なんて言葉をえらそうに使っていた私ですが、説明せよと言われるとなかなかうまくできません。また抽象化についても、『共通点探しにより問題解決に役立つ』程度しか説明できない浅いレベルでしか理解してません。
そこで、メタ思考や抽象化について、自分の言葉で説明できるようになり、その重要性を理解し、思考法の幅を広げることができるようになることを目的として、目的にかなう本を探していたところ、なかなかの良書があったので紹介いたします。
「メタ思考トレーニング」です。
目次
メタ思考トレーニング:メタ思考や抽象化の重要性
1つ上の視点で考える3つの意味
何故メタ思考や抽象化が重要なのでしょう。
本書の「はじめに」で、3つ語られています。
①私たちが成長するための「気づき」を得られる
②思い込みや思考の癖から脱する(視点が広がる)
③上記2つの「気づき」や「発想の広がり」を基にした創造的な発想ができる
社会やサービスが成り立っているのは、この3つのおかげといっても過言ではないでしょう。思い込みや狭い視点で良いサービスが生まれるはずはなく、視点を広げ、新しい発想があるから、より良いサービスが誕生します。
だからこそ、メタ思考や抽象化が必要なのです。また、以前紹介させていただいた「成人発達理論による能力の成長」という本でも、抽象化の必要性は説明されております。
引用してみましょう。
しかしながら、「抽象的」という言葉の本質は、「曖昧なもの」を意味する言葉ではありません。むしろ「抽象的」というのは、「木を見て森を見る」という言葉が示すように、全体を把握することを意味します。
成人発達理論による能力の成長(P168)より
抽象的なレベルで物事を把握する力というのは、複雑なものに対処するために必要な力だと言えます。そして重要なことは、複雑なものに対処する際に、私たちは、常にその複雑性よりも一段上の能力レベルがなければならない、ということです。「いかなる問題も、それが生み出された時と同じレベルで発想していては解決できない」というアインシュタインが残した名言は、まさにそのことを指摘しています。
成人発達理論による能力の成長(P169)より
抽象的なレベルで思考ができることには、その他にも「再現性をもたらす」という重要な点があります。端的に述べると、「抽象性」が高まるというのは、実際の現場での「再現性」が高まるということを意味します。
成人発達理論による能力の成長(P172)より
つまり、抽象化することが何故重要かというと、創造的な発想ができるだけでなく、複雑な問題を解決したり、他で再現することができるからとのことです。
メタ思考や抽象化の意味を自分の言葉で説明できるか?
メタ思考やメタ認知など言葉が似ていてよくわからない
自分の言葉で説明できるようになるためには、難解なメタ思考や抽象化という言葉をいかにわかりやすくできるかが課題です。
メタ思考、メタ認知、抽象化、一般化、など、似たような意味で使われていて、非常に混乱しますので、今回をいい機会として頑張って整理してみます。
メタ思考とは
例えば『メタ認知』を、ウィキペディアで調べてみましょう メタ認知 wiki)
(自己の認知のあり方に対して、それをさらに認知することである。(2019年4月現在)
・・・とてもわかりやすい説明とは思えません。このあたり専門的な言葉は、どれも似たようなわかりづらい表現のため腹落ちしません。
では、『メタ認知』は一旦横に置いておいて、『メタ思考』について、本書20ページから引用してみましょう。
メタ思考とは、自らの視点を一つ上げて、自らが思考に関してある壁に閉じ込められた「とらわれれの身」になっていることに気づくことです。
メタ思考トレーニング(P20)より
う~む・・・。ウィキペディア先生は、メタ認知を「自己の認知のあり方に対して、それをさらに認知することである」と言っており、メタ思考もだいたい同じようなニュアンスです。
であるならば、『メタ認知』と『メタ思考』を、このブログでは意味が似た言葉と整理します。
そこで、上記のウィキペディアの説明を参考に、『メタ思考』の具体例をあげてみましょう。次のようになるのではないでしょうか。
「俺は犬が好きだ」という自分の思考(認知)があるなら、「何故『俺は犬が好き』なのだ」というように認知することが『メタ思考』である。
考えている自分を、「何故自分はそう考えているのか?」と考える。まるで考えている自分を、他人であるかのように捉える。上から自分を見ている感覚ですから、1つ上の視点です。
「メタ思考とは」については、上記のように整理してみました。
抽象化とは
では、抽象化について、ウィキペディア先生を確認してみましょう 抽象化 Wiki)
(「対象から注目すべき要素を重点的に抜き出して他は無視する方法である」とあります。
ふ~む、やはり腹落ちしません。
では、「抽象化とは」について、本書97ページからも引用しましょう。
抽象化とは、複数の具体的な事象に高次の共通点を見つけて一般化することです。
メタ思考トレーニング(P97)より
なんとなくですが、わかりづらいのでモヤモヤします。
まず「一般化」について、goo国語辞書を見てみましょう (一般化 goo国語辞書)
『さまざまな事物に共通する性質を抽象し、一つの概念にまとめること』とありますが、一般化も抽象化も意味が同じですね。
上記の本書(P97)からの引用文の場合、「抽象化とは~一般化することです」とありますが、言い換えれば「抽象化とは~抽象化することです」と言っているように聞こえるわけです。こういうところが、メタ思考関連の用語で、混乱するところです。
とりあえずここでは、goo国語辞書を参考にして『一般化』を「ひとつの概念にすること」と整理します。ひとつの概念ですから、あなたと私で同じ解釈ができるはずです。例えば『男』という言葉が一般化した言葉なら、あなたと私で『男』は同じ解釈になるはずです。
ここで抽象化に話を戻しますと、ウィキペディアと本書の説明から、「複数の対象から共通点を探すこと」=『抽象化』の説明となりそうです。
『ひとつの概念にすること』=『一般化』、「複数の対象から共通点を探すこと」=『抽象化』として、具体例をあげるならば、以下のようなものになるかと思われます。
「犬」と「猫」の共通点(抽象化)は「動物」です。つまり、高次の(メタ)の共通点が「動物」なので、犬と猫は「動物」として一般化(ひとつの概念化)できます。
「メタ思考とは」と「抽象化とは」を自分の言葉で説明する
では、これまでのところをまとめます。
■「メタ思考」とは
「何故『俺は犬が好き』なのだ」と一つ上の視点で認知することです。
■「抽象化」とは
「犬」と「猫」の高次の共通点(抽象化)は同じ「動物」であり、「犬」と「猫」を「動物」として一般化(一つの概念化)することです。
このようになるわけですが、この説明は具体例であり、一般化された説明ではございません。そこで、再現性がある一般化っぽい言い方に変換すると、次のように言い換えることができます。
■「メタ思考」とは
「何故「問題」を問題だと考えているのか」と一つ上の視点から認知する思考法
■「抽象化」とは
複数の具体的なものを上位概念で共通点を見つけて、その共通点で一般化する方法
一般化しましたので、一般化することで再現性があるなら、再度、具体的な言葉で言い換えてみましょう。
■「メタ思考」とは
何故「俺は女が好きなのか」と『女好きな自分』を一つ上の視点から認知すること。
■「抽象化」とは
「女」と「男」の共通点は「人間」というように、上位概念の共通点で一般化すること。
と、このように再現できます。(具体例が簡単すぎなのはお許しを)
これで、「メタ思考」や「抽象化」の説明が、わかりやすくなったかどうかわかりません。もっと上手に説明する言葉があるかどうか、今後も模索していきたいと思いますが、今はこのように説明したいと思います。
メタ思考のための2つの方法とは?
次にメタ思考や抽象化のトレーニングについてですが、本書では次の2つの方法が紹介されています。
・『上位目的を考える』ための『Why型思考』
・『抽象化する』ための『アナロジー思考』
Why型思考
上位目的を考える『Why型思考』とは何か、簡単に言えば、「何故?」と考えることです。理屈については、本書から学んでいただくとして、例を1つあげてみます。
「この間の飲み会、時間が短かったね」という発言に対し、あなたはどのように対応しますでしょうか?
「よし、次からは時間を長くしよう」と考えたします。それは、対応として正しいと言えるでしょうか。
この言葉に対し、何故?(why)と疑問を持つことが『Why型思考』です。
何故、「時間が短い」と発言したのでだろう?
・誰か特定な人と話せなかったのかな、話が足りなかったのかな?
・飲み足りなかったのかな?
・忙しくて後から参加したのかな?
・楽しかったという意味かな?
何故を考えれば、このようにさまざまな理由を考えることができます。
もし、特定の人と話足りなかったことが発言の理由なら、前述の『時間を長くする』ことは解決策になりませんので、特定の人と話す機会を作ってあげることが解決策になるでしょう。
楽しいと感じたことが発言の理由なら、次の機会でも、同じ方針で企画してあげればよいことでしょう。何故=whyという問いに対する回答によって解決策が違ってくるわけですから、『Why型思考』することがいかに大事なことであるかわかります。
おそらく、ほとんどの人が常にとは言わないまでも、『Why型思考』は実践されているかと思います。それを常に意識できるようになると、感情的ではなく冷静でいられる気がして、大人な自分になれますね。
アナロジー思考
『抽象化する』ための『アナロジー思考』とは何でしょう。ヒントは、Wコロンのねずっちです。(ご存じでなかったらすみません)
ここも理屈的なことは、本書から学んでいただくとして、例を1つあげてみます。
①「相撲」と掛けて「花見」と解く。その心は?
少し考えてみましょう。抽象化して共通点探しをしてみてください。
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わかりましたか?
正解は、『どちらも「せきとり(関取、席取り)」が必要』です。せきとりが共通点です。相撲(関取)と花見(席取り)が具体化ですね。
このような「抽象化」+「具体化」する思考が、アナロジー思考です。
このアナロジー思考は、ビジネス含むさまざま場面で使えますよというのが、本書の言いたいことでして、そのためのパターンがたくさん紹介されてます。非常に勉強になりますし、その思考方法になれることはあなたの武器になると思います。
メタ思考トレーニング:まとめ
今回の紹介で、本書の良さを紹介しきれているとは思ってませんので、是非読んで実感してほしいと思います。トレーニング本ですので、都度考えながら読むことは、読書のテンポがよくないですが、頭のリフレッシュにはよいです。
今、自分を成長させたいと勉強されている方には、よい刺激になると思います。なぜなら、メタ思考や抽象化をトレーニングすれば、発想力も問題解決力も大幅にアップすると思われるからです。
是非、本書を読んで、理論的なことを学習していただければ幸いです。