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小学校4年生の娘が英検5級の試験を受ける日のことです。娘は前日まで、一人で試験勉強し続け当日を迎えました。なぜなら、親が多忙で放置気味だったため、独学するしかなったからです。ただ親としてもスクールから合格圏だと聞いていたため、本人に任せてみたいという気持ちもありました。娘が自力で合格できたら、自信も持てるようになり一石二鳥です。
当日の朝、こんな会話をしましたが、後から失敗したと悔やみました。辻先生の『メンタルトレーナーが教える子どもが伸びる スポーツの声かけ』という本を読み、子どもに対する声かけの大切さを理解しておりましたが、つい口から出てしまったのが先の言葉だからです。
私は一体、何を間違えたのでしょうか。
目次
メンタルトレーナーから教わる子どもへの声かけ:おすすめ本
子どもへの声かけの仕方が大切な理由
子どもへの声かけに関するノウハウ本もたくさん出版されていますように、どう声かけするか意識することは大切なことです。なぜかと言いますと、それはパフォーマンスの方程式が関係しているからです。
パフォーマンスの方程式とは、以前の記事でも紹介させていただきましたが、下記のようなものです。
パフォーマンス=「何を」×「どんな心で」
この方程式は、同じメンタルコーチでありながら、まったく別々のアプローチである原田メソッドの原田隆史先生とフロー理論の辻秀一先生の両名が、揃って口にしている方程式です。
スポーツに限らず、人間のパフォーマンスはすべて「何を」、「どんな心で」やるかでできています。
「何を」は行動の内容です。
例えば、野球の練習であればバッティング練習だったり、サッカーの試合であれば得点を決めるといった、プレイの部分にあたります。
「どんな心で」は、その時の心の状態のことです。
例えば、楽しいと感じて練習したり、イライラしながら試合をしたり・・・。人間の喜怒哀楽の部分と言っていいでしょう。当然、心の状態はそのときによってさまざまです。
けれども私のメソッドでは、これをシンプルにとらえています。
心の状態は、
”ご機嫌”か”不機嫌”かのどちらかだけ。
大きく分けて、この二つに分けられると考えているのです。メンタルトレーナーが教える子どもが伸びる スポーツの声かけ(P10~11)
「何を」である具体的な行動を「どんな心で」やるかによって、よいパフォーマンスになるかどうかが決まってきます。その「どんな心で」についてですが、辻メソッドでは、ごきげんな状態の方がよいと言っております。ごきげんな状態を、辻メソッドでは、「フロー状態」と呼んでいます。
●ご機嫌=フロー状態
気分よく、充実感を得られている状態。夢中になって目の前のことに集中かつリラックスし、自分の力を発揮できている状態。
●不機嫌=ノンフロー状態
落ち込んだり、イライラしたり、心が乱れている状態。心がゆらぎ、とらわれ、自分らしい力を発揮できていない状態。メンタルトレーナーが教える子どもが伸びる スポーツの声かけ(P16)
なぜ、声かけが大事なのかと言いますと、辻先生はこうおっしゃっております。
前述したとおり、人間のパフォーマンスは「何を」、「どんな心で」やるかで構成されていますが、「何を」の部分についての声かけだけになっていて、「どんな心で」という心の面についての配慮がないのです。
メンタルトレーナーが教える子どもが伸びる スポーツの声かけ(P22)
心まで配慮した声かけが出来ていないと、その声かけは単なる『指示』でしかないのです。指示ばかりされたら、嫌ですよね?それは大人も子どもも同じだと思います。
本書は、やるべきことについて『指示の声かけ』と心を励ます『支援するための声かけ』、そのバランスを配慮した声かけが提案されていて非常に勉強になる本なのです。
子どもがやる気を失う声かけ、やる気を出す声掛けの例
では、実際にどんな声かけが良くないのか、本書から具体例をピックアップしてみます。
試合前の声かけの例
おはよう。今日は大事な試合だね。⇒✖
おはよう。さあ顔洗って朝ご飯を食べよう。⇒〇
✖の例ですが、これはよく言ってしまいますね。では、何が悪いのかというと、「大事」という言葉です。大事ではない試合などないでしょうから、わざわざ意味づけする必要はないのです。むしろ意味づけすることで余計なプレッシャーを与えてしまいます。
上記具体例以外では、「試合まで時間があるよね。今、できることをしよう」「今日の試合でやることは整理されているの?」などがあります。たしかに「大事」と言われるよりかはよいかもしれません。
では、我が家のように子どもが「大事」という言葉を使った場合はどうでしょうか。その場合はこんな具体例が提案されていました。
「確かに大事に思えるかもしれないけど、試合は試合だよ。やるべきことを一生懸命やればいいんじゃない?」
「一生懸命やればいい」と終わるより、「一生懸命やればいいんじゃない?」と質問にしているところが指示っぽくなくていいですね。大事な試合前の言葉ですが、こんな風に言ってみてはいかがでしょうか。
試合中の声かけの例
ドンマイ。気にしないで行こう。⇒✖
次、次。今に集中。⇒〇
✖の例ですが、これは「気にしないで」というのが悪いのはわかりますね。そう言われて気にしなかったことなどないでしょうから。しかしながら、わかっていても、口癖のように言ってしまうのが「気にしないで」なんですよね。
「今に集中」と、次に向かう声かけを習慣にしましょう。
試合後の声かけの例
なかなか勝てないけど次はがんばろうね。⇒✖
残念だったね。悔しいよね。次もがんばろう。⇒〇
この短い言葉で何点訂正できるでしょう?
まず一点目、「なかなか」という言葉。わざわざつける必要のない言葉なのでおすすめできないとのこと。
二点目、「次は」ではなく「次も」と言うこと。「は」ではなく「も」です。同じようなことを以前紹介させていただいた漆紫穂子さんもおっしゃってました。「は」という言葉は、評判悪いですね。
訂正案が、「残念だったね。悔しいよね。」と気持ちをわかってあげること。受け止めて、次につなげる言葉を続けましょう。
こんな短い声かけでも、よりよい言い方にするために3つも直せるところがあるのですね。
練習中の声かけの例
できなくても大丈夫だから・・・。⇒✖
一生懸命やれば大丈夫!⇒〇
「できなくても大丈夫」も言ってしまう言葉です。とくに「大丈夫」って言葉はよく使われますが、「何がよ」と言いたくなりますね。
その点改善例のような言い方の方が、具体的でいいです。さらにもう少し改善するとしたら、時間の幅を持たせること。
「今はできなくても大丈夫。練習を積んでいけばできるようになるよ」
この例では「今は」と言って、できないのは「今」であり、将来は違うというイメージを与えてますので、未来に希望が持てますね。そしてこの言葉は、「練習」を「経験」に言い換えれば、職場で使えます。同僚や部下を励ますときに使うといいかもしれません。
親として子どもにどう声かけすればよかったか?
冒頭の私と娘の会話は、このコンテンツ用に作った話ではなく、本当のやりとりです。恥ずかしい話ですが、嘘ではないのです。そしてこれまでの紹介した声かけを参考にするなら、次のように言えばよかったのかもしれません。
どうでしょう。たしかにこのような声かけの方が良さそうですね。しかし、このような言葉が自然と出てくるまでは、それなりに時間をかけ日々反省を繰り返す親の努力も必要でしょう。簡単ではありません。
そして、娘の英検5級の試験結果ですが、無事合格しました。すでに4級合格が視野に入れてよいくらい高い点数で合格したようです。父親の「今できることを全力でやろう」以外は、あまり良くない声かけでも、高パフォーマンスを発揮してくれたことには感謝しかありません。
まあ、娘は原田メソッドの日誌の書き方を教えており、1年近く書き続けているため、最近ではメンタルがしっかりしてきてました。声かけだけでなく、そういう娘の努力が試験結果に結びついたのは間違いないでしょう。
まとめ
親としてなぜ子どもが伸びる声かけを!
いかがでしたでしょうか。今までの声かけはプレッシャーを与えていただけだったかもしれないことに気づかれましたでしょうか。また、短い声かけの中にも、より良い声かけに変えれるポイントが、思った以上にあることがわかるかと思います。とくに心の支援を意識する言葉を選ぶだけで与える印象はガラリと変わります。
メンタルを意識した声かけも良い学びなのですが、それよりも考えておきたいと思ったのは、「なぜ、自分は良い声かけをしてあげたいと思ったのか?」という視点です。
人として相手に良い声かけしたいと思うのは当然かもしれませんが、本当にそれだけと言えるかという考えがよぎるのです。もしかしたら、自分の思う通りに相手を動かしたくて声かけの仕方を勉強しようとしていないか、その点はきちんと考えておきたいたいのです。
例えば、子どもを成功させたいと思っているとしましょう。親なら子どもを成功させたいと思うのは当然ですが、その成功は子どもが望んでいるものでしょうか。親の自分が叶えることができなかった夢を子どもに託したいために、あるいは親の見栄のために、子どもに無理をさせているとしたら、それは声かけを見直す以前に、親の考えを見つめ直す必要があるかもしれません。
もう少し具体的に言うなら、東大に合格させたいけど、子どもがなかなか勉強してくれないから、子どものやる気が起きるような声かけを勉強する。テストの点が悪かった時に、いい声かけをしたいから言葉選びを勉強する。こんな理由があったとしても、そもそも子どもが東大に合格することを望んでいないのなら、声かけを学ぶ前に子どものやりたいことは何かを考えてあげる必要があるということです。
私自身の願望を子どもに押しつけるために声かけするのではなく、子どもの才能を伸ばすたけに良い声かけをすること。その点を自分自身に念押ししたいと思います。