成人発達理論



仕事で能力が発揮できない2つの要因とは・・・?人のせいではなかった

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新しく配属されたメンバーの能力に疑問を感じ、冷たい態度を取ってしまったことがあるのではないでしょうか? 例えば、新人や中途採用などの新しく仲間になったメンバーに対し、最初は優しく接していたけれど、数ヶ月経過して仕事ができないことに判明し、さらに迷惑かけられることが多くなったなどが原因でそのような態度を取ってしまうのではないでしょうか。

たとえ相手が、教わっていることをメモらず、わからないことを調べず、そして学ばずであったとしても「自分は仕事もでき尻ぬぐいしているから正義であり、仕事ができないのに勉強しない相手が悪い」と正論かざして、事実上、虐めてると思われるような接し方をしてしまうとなると気をつけなけばなりません。相手が逆らってこなければ、強い立場の人は暴走してしまいますから、自分が考えている以上に傷つけてしまうかもしれないのです。

えらそうなことを書きましたが、私は前述のような接し方をしてしまったことがあります。そして、相手に対し反射的に礼節のない態度を取ってしまうところは堕ちた自分自身の行動にストレスを感じ、クズな自分に対して反省を繰り返す日々を送りました。私だって別の職場に行けば、仕事ができないことが原因で虐められてしまうかもしれませんから、こういう接し方していいわけがないことくらいわかっております。だからこそ、相手をどう育てればよいのか、自分にできることは何かという悩みで頭がいっぱいでした。

仕事ができないのはなぜなのか、仕事ができない人をどうしたら育てることができるか? そんな疑問に答えを与えてくださったのが今回紹介する、成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法という本でした。

 

成人発達理論による能力の成長①

ダイナミックスキル理論とは?

本書はダイナミックスキル理論の活用法を学べる本です。ダイナミックスキル理論とは、カート・フィッシャー教授(ハーバード大学教育大学院教授)が提唱してる『人の能力(スキル)の成長』についての理論です。

ダイナミックスキル理論は、私たちの能力がどのようなプロセスとメカニズムで成長していくのかを説明してくれるものです。

成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法(P34)

以前紹介させていただいた書籍「なぜ部下とうまくいかないのか」で中で語られていたのは、ロバート・キーガン教授(ハーバード大学教育大学院教授)の、『人のの成長』についての理論です。能力と器の違いがありますので、混同しないように注意が必要です。( icon-arrow-circle-down の記事で紹介しております)

なお、本書も「なぜ部下とうまくいかないのか」も、著者は加藤洋平氏です。この2冊で『人の器』と『人の能力』、両方の成長について学べます。

仕事で能力が発揮できない2つの要因とは?

本書のダイナミックスキル理論により知ることができたのですが、「仕事ができない(能力を発揮できない)」のには、2つの要因があることがわかりました。

要因①:人の能力の環境依存性

私たちの能力は、特定の状況において発揮されます。つまり、以前の職場でリーダーシップを発揮できたとしても、新しい職場では発揮できなくて当たり前なのです。

●私たちの能力は「環境依存性」という特徴を持つ。環境とは、状況と言い換えることができ、私たちの能力の種類とレベルは、置かれている状況に応じて変化する。
●私たちの能力は、置かれている状況の種類や特性に左右されるため、能力を開発するためには、取り巻く状況の種類や特性を見極めることが最初に求められる。

成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法(P53)

ですから、「あれでリーダーと言えるのだろうか?」と人を責めるのも、「前の職場ではできていたのに・・・」と自分を責めるのも、やめましょう。環境依存性という特徴がある限り、新しい職場で仕事ができないのは当然なのです。

要因②:人の能力の課題依存性

私たちの能力は、課題の種類や性質が変わると、発揮する能力の種類やレベルが変わります。

●私たちの能力は、「課題依存性」という特徴を持つ。これは、課題の種類や性質が変わると、私たちが発揮する能力の種類やレベルが変わることを意味する。
●私たちの能力は、特定の課題に対して発揮されるわけではなく、具体的な課題を通じてしか育まれないという特徴を持つ。

成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法(P60)

たとえば、職場でリーダーシップ能力を発揮する必要があり、今回発揮すべきリーダーシップ能力がプロジェクトの「進捗を管理する課題」と「部下とのコミュニケーションの課題」だとします。

この場合、自分は「進捗を管理する能力」は得意だけれども、「コミュニケーション能力」は不得意だというようなこともあるでしょう。このように、課題が変わると能力が発揮できないことがあるわけです。この不得意な「コミュニケーション能力」は、ロールプレイなど具体的な課題に取り組むことで、能力を高めることができます。逆に、「コミュニケーション能力」に関係がない具体的な課題に取り組んでも「コミュニケーション能力」は上がらないのです。

このように、「環境依存性」と「課題依存性」により能力が発揮できないことがあるのはわかりました。言われてみれば当たり前なことと感じるかもしれませんが、普段は意識していないことが多いと思います。だからこそ、冷たい態度をとってしまうのではないでしょうか。(私のことですよ)

もし、冷たい態度をとりなったら、「環境依存性や課題依存性が原因で出来ないこともある」と、考え直す癖を持ちましょう。

サブ能力を特定しよう

仕事ができない要因、言い換えれば能力が発揮できない要因ですが、それは「環境依存性」と「課題依存性」によるもであることがわかりました。

では、能力を上げていくにはどうすればよいのでしょうか。

それには、まずサブ能力を特定することです。では、サブ能力とは一体なんなのでしょうか?

私たちがある特定の能力を伸ばそうとする時に、能力の種類を明確化することの重要性を先述しましたが、さらに重要なのは、1つの能力には、それを構成する細かな能力が含まれていることです。1つの能力を構成する小さな能力のことを「サブ能力」と呼びます。

成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法(P75)

このように、状況や課題を考慮して、1つの能力を構成するサブ能力を特定していくことが、能力開発の上で最初に求められることです。

成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法(P77)

リーダーシップ能力を一つをとっても様々なサブ能力があります。例えば、「信頼性獲得力、ビジョン構築力、組織統率力、指導力、変革実行力、レジリエンス、目標達成力、自他成長支援力」などがサブ能力です。

このように、リーダーシップ能力のサブ能力を特定して、それぞれサブ能力を向上のための課題をクリアしていくことで、リーダーシップ能力が上がっていきます。そのため、ただ漠然と「リーダーシップ能力を上げろ」という指示では、リーダシップ能力が向上しなくて当然なのは理解できる話ではないでしょうか。

「仕事ができない」とレッテルを貼る前に、その仕事で求められる能力のサブ能力を特定して、「できているサブ能力」と「できていないサブ能力」を分け、できていないサブ能力を向上させる取り組みを行いましょう。このようにして、自分や他者を育てていく努力をした方が、ただ能力をあげようと努力するよりも、効率よく科学的だと思います。

また、サブ能力を特定することで、何が苦手で何が得意がわかるわけですから、人それぞれの状況に合わせた人材育成計画が立てられますね。

たとえ手間だとしても、仕事ができない人のできない能力を特定し、その能力を構成するサブ能力を分析して、サブ能力が向上するような取り組みをすれば、仕事ができる人になったかもしれません。そう考えると、1つできていない能力があったことで、サブ能力のすべてができていないような感覚になり、相手に冷たくあたってしまう行動に正義などないことがわかります。

成人発達理論による能力の成長①:まとめ

仕事できない人にイライラする前に

仕事ができないのはなぜなのか?

要因は2つ「環境依存性」や「課題依存性」によるものである。

仕事ができない人をどうしたら育てることができるか?

特定の能力を向上した場合は、その能力を構成するサブ能力を特定して、サブ能力を高めていく取り組みをすること。

このことを学べたとき、救われた気がしました。私の教え方のどこをどう直せばいいか、アクション方法がわかったからです。

正直、読みこなすには難易度が高い本でした。しかし、各章末に「要点メモ」があったことで、理解の助けになりました。おそらく、難しい理論をわかりやすく伝えようとした著者の配慮なのかもしれません。感謝。

また本書には「成長のレシピ」という課題があります。全部で18レシピです。このレシピは、後半に進むにつれ、難しくなります。「できるかな?」と思うような高レベルな課題なのですが、「おわりに」を読めば、レシピに込めた著者の意図が確認できます。引用してみましょう。

 特に、本書の中で取り上げた「成長のレシピ」のいくつかは、1人で実践を進めることが難しかったのではないかと思います。実はそこに著者としての意図がありました。つまり、成長のレシピをもとにしたエクササイズを、ぜひとも周りの方々と対話しながら取り組んでいただきたい、という想いがあったのです。
本書の中で言及したように、私たちは1人で成長することはできません。私たちは、常に取り巻く他者の力を借りながら、一つ一つ成長の歩みを進めていきます。本書を持ち寄り、人間の成長について、取り巻く人たちと共に対話と実践を行い、本書で紹介した概念や理論が、能力開発の現場における共通言語になれば幸いです。

「成長のレシピ」を通して、読者にコーチングしていたわけです。このレシピを私はまだ取り組み切れておりませんが、できるところをやってみただけでも、先述したように、私の教え方の何が悪かったのかが理解できましたので、よい学びになれたと思います。

今回は、仕事ができない要因についてまとめさせていただきました。次回は、成長を促すトレーニングについて書きたいと思います。

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